炊事すいじ)” の例文
炊事すいじのほうの手助けをしたりしていたため、開式になって、はじめて荒田老の怪奇な姿に接し、非常におどろいたらしかった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
じっさいには、木曾の娘子軍じょうしぐんというものは、粮食の運搬、炊事すいじ、死傷の看護、縫工ぬいこうなどの面で、ずいぶん軍務をたすけていたのではないかと思われる。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中で寝泊ねとまりから炊事すいじから何から何まで出来るりっぱなものだと吹いておいたものだから、さてこそわれもわれもと、連れて行くことをねだられるのだった。
火星探険 (新字新仮名) / 海野十三(著)
だから、寝具から炊事すいじの品々、当座の食糧などすべて日ごろから補給しておいて、いつなんどき逃げこんでもしばらくは困らないだけの用意を調えていた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
しかるに荷物の整理いまだそのちょかざるを以て、観測所のかたわらの狭屋きょうおくに立場もなきほど散乱したる荷物を解き、整理を急ぐといえども、炊事すいじす暇だになければ
昨日はばかに暖かくて、日中は汗を覚える程だったが、今日はまた寒い。炭が無くなった。今日は炊事すいじが出来ないので食パンを買ってそれで済ました。また貧乏が来る。
第一に金貨をつみいれ、つぎに十七人の一ヵ月分の食料、つぎに武器、弾薬、被服ひふく、書籍、炊事すいじ器具と食器、望遠鏡と風雨計、ゴム類、つり道具、それだけで船はいっぱいであった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
必要としたからだ。つまり、君に、炊事すいじやそのほかの仕事をしてもらおうとおもったのだが、不幸にして君は、模倣もほうの巧みな日本人だったじゃないか、一刻も、この島に置くわけにはいかん
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
同十五年には今までの古い家を壊して、その跡に新築することになり、そばにあった小屋で一冬を過すことになった。郷里から次姉が迎えられたが、この不自由な佗住居わびずまい炊事すいじの手伝をしていた。
そのお家の庭のすみ炊事すいじをして、その夕方、六畳間でみんな早寝という事になり、けれども妻も義妹もひどく疲れていながらなかなか眠れぬ様子で、何かと身の振方などに就いて小声で相談している。
薄明 (新字新仮名) / 太宰治(著)
室のすみえてあったオルガンの前にこしをおろしており、先生夫妻と、炊事すいじの並木夫妻と、給仕の河瀬の五人が、室の中央に輪を作って立っていた。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
世帯道具しょたいどうぐ——といったところで茶碗皿小鉢にはしが二組と、それにささやかな炊事すいじの品々だが、その茶碗と箸も正直なところできることなら同じ一つですませたいぐらい。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それより飲料に供すべき氷雪の収拾、室内の掃除、防寒具の調製、その他炊事すいじ一切いっさいの事を同人に一任し、予はもっぱら観測に従事し、やや骨を休むることを得て、ずこれまでの造化の試験をつつがなく
人々は、そこへかたまって、炊事すいじの煙を立て初めた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから間もなく、朝倉夫人は炊事すいじのほうの用で塾長室を出て行き、あとは三人で夕食になるまで話しこんだ。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
炊事すいじ小屋である。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)