瀑布たき)” の例文
山中には三水さんすいと唱える金性水きんせいすい竜毛水りゅうもうすい白毛水はくもうすいの清泉が湧き、五つの瀑布たきと八つの丘嶽おかとまた八つの渓谷たにとがあって、いずれも奇観だ。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
われはわづかにこの事を聞きたる時、騷ぎ立ちたる人々に推し倒されぬ。目の前は黒くなりて、頭の上には瀑布たきの水漲り落つる如くなりき。
此からは屹度親のいう事を聞くから助けてくれるようにと祈祷いのりをした。そしてもう直ぐに瀑布たきだろうと思って舟の中に突俯して泣いた。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
『それだから今度こんど瀑布たき修行場しゅぎょうばとなったのじゃ。そちとおり、こちらの世界せかいおきてにはめったに無理むりなところはない……。』
削立つた岩は罅隙すきまのない壁の様で、しかもその上から瀑布たきが泡を飛ばして墜ちて来て、直ぐ下にある、周囲まはりの森の影に裹まれて、真黒な淵にはいります。
新浦島 (新字旧仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
まるで大きい瀑布たきをならべたように一面にどうどうと落ちて来て、この小屋も押流されるかと危ぶまれた。雨の音がはげしいので、とても談話などは出来なかった。
麻畑の一夜 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
……あすこへ行くんだ……あの瀑布たきの上の方を爆薬ドンでブチ壊して閉塞ふさいでしまえばモウこっちのもんだ。儲かるぜそれあ……轟先生は元来、正直過ぎるからイカン。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そこから滴がしたたって来た。水路は幾度か迂廻した。水路が見る見る逼り合い、水のおもてふくれ上がり、断崖が左右から寄せて来た所に、一条の瀑布たきが落ちていた。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
長い/\石段が、堂の眞下へ瀑布たきけたやうに白く、こんもりとしたしげみの間からいて見えた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
そして風がどんなに吹きすさんでも、雷が間近にゴロ/\と鳴り渡つても、稻妻いなづまが強くつゞけざまに光つても、二時間つゞいた嵐の間中瀑布たきのやうに雨が降つても、私は些の恐怖も威嚇も感じなかつた。
岩から岩を伝ってくだ瀑布たきの水のようなものだ。
わたくして、これはきっととうとかみさまだとさとり、丁寧ていねい御挨拶ごあいさついたしました。それがつまりこの瀑布たき白竜はくりゅうさまなのでございました。
胸突き八丁の登り口に近く、青い苔のした断崖からは、金性水きんせいすいと呼ぶ清泉が滾々こんこん瀑布たきのごとく谷間に流れ落ちている。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
マイル離れても其響が遠くで雷の鳴るように聞える。瀑布たきの処には始終虹が吹いているから頗る奇観である。虹の外にも此近辺には見るものが多い。瀑布には四面ある。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ふたりは瀑布たきのような雨を衝いて麻畑のなかへまっしぐらに追って行った。
麻畑の一夜 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
『まあ瀑布たき修行場しゅぎょうば……。どんなに結構けっこうなところでございましょう。わたくしも、何所どこみずのあるところ修行しゅぎょうしたいような気分きぶんになってりました。』
しかし雲巌寺を出発してから行く途々みちみち、渓流に沿うて断岸の上から眼下を見れば、この渓流には瀑布たきもあれば、泡立ち流るる早瀬もあり、また物凄く渦巻く深淵などもあって
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)