滅多矢鱈めったやたら)” の例文
滅多矢鱈めったやたらに六という字のつくものを並べている内に、ふと、講談本で覚えた所の真田幸村さなだゆきむらの旗印の六連銭ろくれんせんを思い浮べた。
二銭銅貨 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
まだまだ安心はならぬと無理に顔をしかめて、とにかくお題目と今は本気に日蓮様におすがりしたくなって、南無妙法蓮華経と大声でわめいて滅多矢鱈めったやたらに太鼓をたたく。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ッと面を押えて退った時に、今度は妻の方が再びもぞもぞと起き上る気配なので、我を忘れて駈け寄るが早いか、体と云わず顔と云わず滅多矢鱈めったやたらに殴りつけました。
陳情書 (新字新仮名) / 西尾正(著)
その中には、ロシアの津々浦々、到るところで、馬を励ましたり、急き立てたりする時に浴びせる、いろんな掛声だの、滅多矢鱈めったやたらな、あらゆるののしりり声だのが取り入れてあった。
暗黒くらやみもとより見当は付かぬが、市郎は勝つに乗って滅多矢鱈めったやたらに蹴飛ばすうちに、靴のさきにはこたえがあった。敵は猿のような声を揚げてきゃッと叫んだぎりで霎時しばらくは動かなかった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
種目をならべると、数限りなく魚はあり、又その釣技方法も変化してくるが、何でも来いで滅多矢鱈めったやたらに釣るよりも、一種の魚を狙つて、自分独特の釣り方を研究した方が面白い。
夏と魚 (新字旧仮名) / 佐藤惣之助(著)
ふふふ、気味きみわるいか。なさけねえ料簡りょうけんだの、つめにおいがいやだというから、そいつをがせてやるんだが、これだって、かもじなんぞたわけがちがって、滅多矢鱈めったやたらあつまる代物しろものじゃァねえんだ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
六人の門人は乱刀を滅多矢鱈めったやたらにふるばかりであったが多勢に無勢、殊に老骨の悲しさには息疲れに迫った作左衛門、次第に押ッ取り囲まれて数ヵ所の薄傷うすでから朱を浴びたほどの鮮血が流れた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
本気、狂気の見分けも附けずに。滅多矢鱈めったやたらに追い込み蹴込むと。聞いただけでも身の毛が逆立よだつ。地獄というのがそこらに在ります。見かけは立派な精神病院。嘘というなら這入って見なされ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)