浄玻璃じょうはり)” の例文
旧字:淨玻璃
逃がすまいとしていたようだけれど、今日のお酒はちっとばかり、悪い薬がまじったとは、さすがにその浄玻璃じょうはりの目玉でも見えなかったとみえる
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さりげない夫人の言葉にも、浄玻璃じょうはりの鏡をさしむけられたようにすべてを知っていられるのではないかと不安だった……。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
浄玻璃じょうはりのように清いそなたは、わざ/\危険を冒して、修行をするには及ばないのだ。そなたの体に間違いがあったら、それこそ麿は上人へ申し訳がないではないか。
二人の稚児 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
路地も壁も突抜けてそれッきり、どんぶり大川へでも落っこちたら、そこでぼんやり目を開けて一番地獄の浄玻璃じょうはりで、うぬつらを見てくれましょうと思ったくらいでした。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
池の形は八葉蓮華はちようれんげの花の開いたごとく八咫やたの鏡のうねうねとうねって居るがごとく、そうして湖中の水は澄み返って空の碧々へきへきたる色と相映じ全く浄玻璃じょうはりのごとき光を放って居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
その様子をみていると、本当に切なさそうで、全く、地獄で、娑婆しゃばの罪人をごうはかりにかけ、浄玻璃じょうはりの鏡にひきむけて、閻魔えんま大王の家来達が、折檻せっかんしているようにしかみえなかった。
ひろく牙大にしてこの騎士を撃たんとすすむ、両足獅のごとく尾不釣合に長く、首尾の間確かに二十二足生え、酒樽に似て日に映じて赫耀かくようたり、その眼光りて浄玻璃じょうはりかと怪しまれ
平安朝には袴垂保輔はかまだれやすすけ、源平時代には熊坂長範くまさかちょうはん、これ本朝の二大賊じゃ! それにもまさった大盗心をそなた蔵しておろうがの! いいや隠しても隠されぬわい! 老人の眼は浄玻璃じょうはりじゃ。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
性情から、人格から、生活から、精神の高低から、叡智えいちの明暗から、何から何まで顔に書かれる。閻羅えんら大王の処に行くと見る眼かぐ鼻が居たり浄玻璃じょうはりの鏡があって、人間の魂を皆映し出すという。
(新字新仮名) / 高村光太郎(著)
「この間も、キッパリとどめを刺しておいたじゃねえか。ウ、ウーイ……おれの目玉は浄玻璃じょうはりの鏡だと」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
浄玻璃じょうはりに映り、閻魔大王の前に領伏ひれふしたような気がして、豆府は、ふっくり、菎蒻は、せたり。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
紺地に金泥こんでいのごとく、尊い処へ、も一つのへやには名も知れない器械が、浄玻璃じょうはりの鏡のように、まるで何です、人間の骨髄をとおして、臓腑を射照らすかと思う、晃々こうこうたる光を放つ。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「旦那え。……大旦那え。お白洲しらす浄玻璃じょうはりの鏡。もうそんなムダな抗言あらがいはおよしなすって、神妙にちっとでも罪を軽くしていただきなすった方がおよろしいんじゃございませんか」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いちいち浄玻璃じょうはりの鏡にかけて睨んでいるような男——なんとも始末の悪い紐だ。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こう、おいらの口は浄玻璃じょうはりだぜ。おいらあしょっちゅう知ってるんだ。
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かう、おいらの口は浄玻璃じょうはりだぜ。おいらあしよつちう知つてるんだ。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)