水茎みずぐき)” の例文
旧字:水莖
伊勢源の質屋の角を曲って杵屋助三郎と懸行燈に水茎みずぐきの跡細々と油の燃え尽した師匠家の前まで来ると、ただごとならぬ人だかりが岡っ引勘次の眼を惹いた。
ひろげて見ると、ねたましいほどに手ぎわよく書いてあって、文言もんごんは読まない先に、その水茎みずぐきのあとのなまめかしさと、ときめく香が、お松の眼をさえくらくらとさせるようでありました。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
こなたも思わず彼処かしこを見た、柱なる蜘蛛ささがにの糸、あざやかなりけり水茎みずぐきの跡。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
書房ふみやすかさずこの船人の脇艪わきろを押す事を許されたりとて、自己おのれをして水先見よと乞うて止まねば、久しく採らぬ水茎みずぐき禿ちびたるさおやおら採り、ソラ当りますとの一言いちげん新版発兌しんぞおろしの船唄に換えて序とす。
水茎みずぐきの跡もあざやかじゃ」殿はうなるように云い放った。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
浪路は、美しい水茎みずぐきのあとで、こう書いている。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
筆とりて、心のたけを杜若かきつばた、色よい返事を待乳山まつちやま、あやめも知れめ水茎みずぐきの、あとに残せしむらさき。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)