此宿こゝ)” の例文
此宿こゝには定めし胸のすく樣な事もとて來たりける物を、いぢめられては何の甲斐もなしと迷惑がれば、どうでも嬰兒樣は猿蟹のはなしでなくばお氣に入るまじ
花ごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
梅「どうか此宿こゝを出る所だけは駕籠に仕よう」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「あれ聞き給へ。此宿こゝはこゞゐの森にもあらぬを、この夜頃よごろたえせず声の聞ゆるが上に、ひるさへかく」と打出うちいだしたれば、友はときがたきおもゝちして、「何をかのたまふ」とたゞに言ふ。
すゞろごと (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おくさまとろ/\としてお目覺めさむれば、まくらもとのゑんがはに男女なんによはなこゑさのみはゞかる景色けしきく、此宿こゝ旦的だんつくの、奧洲おくしうのと、車宿くるまやどの二かいふやうなるは、おくさま此處こゝにとゆめにもひとおもはぬなるべし。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)