横笛よこぶえ)” の例文
咲耶子は、ゆうべのことで、苦悶くもんの色のかくせぬ中にも、それを見ると、ニッコとして、おびのあいだの横笛よこぶえき、しずかに、歌口うたぐちをしめしだした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あれは横笛よこぶえとて近き頃御室おむろさとより曹司そうししに見えし者なれば、知る人なきもことわりにこそ、御身おんみは名を聞いて何にし給ふ
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
くまさん、いつか、約束やくそくしたじゃないか。ふゆになったら、たけって、ぼく横笛よこぶえつくってくれるといっただろう……。ぼくは、けいこをして、だいぶ上手じょうずになったよ。」
熊さんの笛 (新字新仮名) / 小川未明(著)
滝口は十三の時、建礼門院に仕える女官で身分の低い雑仕ぞうし横笛よこぶえという女を知り、互いに愛し合う間柄となった。しかし父の三条斎藤左衛門大夫茂頼もちよりはそれが気に入らなかった。
咲耶子さくやこがふった横笛よこぶえ合図あいずとともに、押しつつんできた人数はかれこれ八、九十人、それにりむかっていった穴山方あなやまがた郎党ろうどうもおよそ七、八十人、数の上からこれをみれば、まさに
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
横笛よこぶえ
しかし、彼女かのじょはそのうッすらとした夜霧よぎりそこから、やっと、この城郭じょうかくさかいをなす、外濠そとぼりの水をほのかに見出みいだしたのである。そして、しばらくはそこへ、ジッと目をつけて、手の横笛よこぶえをやすめている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)