業刀わざもの)” の例文
無論業刀わざものさきである、はッと思うと二の太刀が動いたらしく、途端に、多市は夢中になって天満の川波めがけてザブンと躍り込んでしまった。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山東笠さんとうがさを日除けにかぶり、青紗あおしゃの袖無し、麻衣あさごろも脚絆きゃはん麻鞋あさぐつの足ごしらえも軽快に、ただ腰なる一腰ひとこしのみは、刀身なかみのほども思わるる業刀わざものと見えた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「はッ」と、武者むしゃぶるいして立ちあがった民部みんぶは、伊那丸いなまるのうしろへまわって、ピタリと体をきめ、見る目もさむき業刀わざものをスラリと腰からひきぬいた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それへ白と青との縞短袴しまばかまをはき、牛皮の毛靴けぐつを深々と穿うがって、腰には、業刀わざものらしい見事な一振りを横たえてもいる。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼方のひょろ松の陰から、の旗でも流れて来るように巌流のすがたが駈けて来たのである。大きな業刀わざもののぬりざやが陽をね返し、銀狐ぎんこの尾のように光って見えた。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見るからに業刀わざものと思われ、送りの人々の眼をみはらせたが、より以上、その長剣がすこしも不似合でない彼のすぐれた骨がらと、猩々緋のなのと、色の白い豊頬ほうきょうおもて
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
唐犬びたいの伊達とは違って、黒羽二重の紋服に、業刀わざものらしい二本の大小、りゅうと長めに落して、いつも二人の乾分を連れ、深編笠の目堰めせきから、チラとのぞけるおもざしは絶世の美男子
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宰領さいりょう青面獣せいめんじゅう楊志ようしの手には、とうのムチが握られていた。腰の業刀わざものもだてではない。——梁中書りゅうちゅうしょから絶対の権を附与され、途中、もし命にそむく者あらば斬りすててもかまわん、といわれてきたのだ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なかなか業刀わざものらしいので、武蔵が、詰問きつもんすると、男は、これは自分のった刀で、実は、あなたの体を借りて、自身で鍛ったこの刀の切れ味を試してみようとしたのですと、不心得を謝して云った。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
業刀わざものはそぼろ助広、持ちはいうまでもないお十夜孫兵衛。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はばきから鋩子ぼうしまで、目づもり三尺ばかりなせき業刀わざもの
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)