くしけづ)” の例文
「二毛暁に落ちて頭をくしけづることものうし、両眼春くらくして薬を点ずることしきりなり」「すべからく酒を傾けてはらわたに入るべし、酔うて倒るゝもまた何ぞ妨げん」
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
くしけづらない毛髮や不恰好に結んだネクタイや惡い顏色などのなかに、踊り子の感化を見出してゐる間
聖家族 (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
かつらたるやうにくしけづりたりし彼の髪は棕櫚箒しゆろぼうきの如く乱れて、かんかたかたげたる羽織のひもは、手長猿てながざるの月をとらへんとするかたちして揺曳ぶらぶらさがれり。主は見るよりさもあわてたる顔して
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
かれはそれから身體からだかたまるやうにおもひながら、あら白髮しらがくしけづられるのをも、かすか感覺かんかくいうした。にはとりこゑみゝとほきこえて消滅せうめつするのをつた。かれつひにうと/\とつてしまつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
栃内とちない和野わのの佐々木嘉兵衛といふ人は今も七十余にて生存せり。この翁若かりし頃猟をして山奥に入りしに、はるかなる岩の上に美しき女一人ありて、長き黒髪をくしけづりてゐたり。
遠野物語 (新字旧仮名) / 柳田国男(著)
即座に沐浴ゆあみくしけづり、化粧を凝らし、服裝を整へて、丹之丞の前へ伴れてこさせました。
薫りあふるる鬢毛をくしけづりつゝ編み上げつ
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
ただ力なく、女はうなじかたむけて髪くしけづる。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)