柘植つげ)” の例文
しかし、とにかく二人がこうして虎の口から助かったのは、あの渡辺の甥とかいう柘植つげ三之丞のおかげであったことに間違いはない。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
眺め飽かぬ鈴鹿山脈の溪谷を横斷して汽車が伊賀の國境を踰えると、すぐ柘植つげの驛がある。芭蕉はこの柘植で生まれたといふことである。
伊賀国 (旧字旧仮名) / 近松秋江(著)
ほんとうに柘植つげの財産がお気に召さないのでございましたら、高は、惜しくも何ともございません。すぐすてますでございます
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
再び私は母と姉と三人で母の里の柘植つげへ移らねばならなかった。父が遠方の異国の京城けいじょうへ行くことになったからである。
洋灯 (新字新仮名) / 横光利一(著)
されば今日だけ厄介やっかいになりましょうとしり炬燵こたつすえて、退屈を輪に吹く煙草たばこのけぶり、ぼんやりとして其辺そこら見回せば端なくにつく柘植つげのさしぐし
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
片手でも押し倒せそうな小さい仮家で、ひいらぎ柘植つげなどの下枝におおわれながら、南向きに寂しく立っていた。秋の虫は墓にのぼってしきりに鳴いていた。
秋の修善寺 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
立っていたのは、同じ番町ばんちょうで屋敷を隣り合わせて、水馬のときにも同じ二組でくつわを並べて、旗本柔弱にゅうじゃくなりと一緒に叱られた仲間の柘植つげ新兵衛だった。
山県有朋の靴 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
証文を認めまする時に必ず印形いんぎょうと云う物を用いまする事になって居りまして、柘植つげ或は金銀等へ自分の姓名を彫付け、是を肉にて姓名なまえの下へ捺しますけれども、時といたして印形を用いず
探偵小説の「謎」 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
国目付は津田平左衛門(幕府使番)柘植つげ兵右衛門(同)という二人。墨印は将軍家綱の花押かおうで、朱印より重いものである。亀千代は抱守だきもりにかかえられて、表広書院おもてひろしょいんで二人に会い、墨印を受取った。
へ ┃ 柘植つげさんが
『春と修羅』 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
片手でも押し倒せそうな小さい仮家で、ひいらぎ柘植つげなどの下枝におおわれながら、南向きに寂しく立っていた。秋の虫は墓にのぼってしきりに鳴いていた。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
水野、山口、柘植つげの諸将は、さてはやはりそれがお気懸りで——と、信長の性急な日頃の気もちと思い合わせ、何かしら、よろいの下に、汗をおぼえた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
貴生川きぶかはを經て汽車を利して柘植つげに𢌞り、そのまゝ上野に出るか、或は土山より昨日の道をまた關に戻るか、それは其時の心の赴くままになし、再び名古屋
伊賀、伊勢路 (旧字旧仮名) / 近松秋江(著)
初めて私がランプを見たのは、六つの時、雪の降る夜、紫色の縮緬ちりめんのお高祖頭巾こそずきんかぶった母につれられて、東京から伊賀の山中の柘植つげという田舎町へ帰ったときであった。
洋灯 (新字新仮名) / 横光利一(著)
和尚は、俗姓を柘植つげという人であることを、お高は聞いたことがあった。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
こうささやくと、美濃部十郎や柘植つげ半之丞のともがらは、仲間だけで、野鼠やそのように、ほりの底を走り去った。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの人は伊賀の柘植つげの人だから、おれと同じ村だ。それだから、おれにはあの人の心持ちがよく分る。小林秀雄はそこを知ってるもんだから、おれに芭蕉論をやれやれと、奨めるのさ。
ややもすれば歯痛にくるしめられて、上下に幾枚の義歯をめ込んでいた。その義歯は柘植つげの木で作られていたように記憶している。私は父の系統をひいて、子供の時から齲歯むしばの患者であった。
はなしの話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
山城国やましろのくにあたりですらすでにそんな凶相きょうそうがあらわれ出した以上、これからかかる伊賀山中の柘植つげ地方や加太越かぶとごえあたりの間道はその危ないこと、思いやらるるものがある。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ややもすれば歯痛に苦しめられて、上下に幾枚の義歯をめ込んでいた。その義歯は柘植つげの木で作られていたように記憶している。私は父の系統をひいて、子供の時から齲歯むしばの患者であった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
呼ばれたので、はっと仰ぐと、松代藩の柘植つげ嘉兵衛というお人。おらあ、夢中で逃げ出した
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
柘植つげ、渡辺のふたりは、両大将の前へ出て、はれがましい報告を、こもごもに語った。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
聞いてみれば城太郎へわがままに怒ったのはいいとしても、あかの他人の柘植つげ三之丞へ怨み顔する理由は毛頭ないので、お通は幾重にも膝を折って、助けてもらった好意を感謝した。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
美濃部も柘植つげも黙笑して聞いているだけである。市松は手持不沙汰に立ち去った。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お物見の渡辺半蔵どのや柘植つげまたろうどのが立ち帰られました」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「渡辺半蔵様のおい柘植つげ三之丞さま」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)