杜絶とぎ)” の例文
「ああ、トラヴィスト。」それだけで法水の言葉がブッツリ杜絶とぎれたが、その後数秒にわたって、二人の間に凄愴せいそうな黙闘が交されているように思われた。
聖アレキセイ寺院の惨劇 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
わるくなったとは言う条一昨年迄はと詞杜絶とぎれ、ちょうど私共が両国近辺に居りました頃は、まだ/\話の種も出来ましたが、今ではとんと指折ることも御在ません
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
二人は会話が杜絶とぎれると、肩を組んで、口笛に合はせて鮮やかな歩調を踏んで行つた。
黄昏の堤 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
それに車内に濛々もうもう立籠たちこめた煙草の煙、それらの中で杜絶とぎれ杜絶れにしか聞えなかったが、行儀の悪い乗客達が食べるだけ食べて、ちらかすだけ散かして、居睡りを始める頃になると
急行十三時間 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
(遺言状——余ノ財産即チ動産並ニ不動産ノ全部ヲ我ガ子ジャン・ゴオテニ与ウ。尚オ、余ハ無情ナル父親タリシコトニツイテ、彼ノ寛恕ヲ乞ウ。余ハ全ク………)ここで杜絶とぎれている。
無駄骨 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
暫らく杜絶とぎれていたが思い切ッて
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
しかし、その異様な対照に気を奪われている矢先だった。それまで肱掛に俯伏うつぶしていた真斎が必死の努力で、ほとんど杜絶とぎれがちながらも、微かな声を絞り出した。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
すると、折よく医師の手で意識が恢復されていて、上述の事情を、杜絶とぎれながらも聴くことが出来た。しかし、それ以上の真相は、混沌の彼方で犯人が握っていた。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
とその声が、ふと杜絶とぎれたかと思うと、彼女は瞳を片寄せて、耳をしげるような所作しぐさを始めた。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
左枝は、杜絶とぎれた言葉の間に、相手の顔の動きをっと見詰めていたが
地虫 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)