末社まっしゃ)” の例文
いつも時平の腰巾着こしぎんちゃくを勤める末社まっしゃどもの顔ぶれを始め、殿上人てんじょうびと上達部かんだちめなお相当に扈従こしょうしていて、平中もまたその中に加わっていた。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ここには、紀文の時のように、吾勝ちに争う幇間たいこ末社まっしゃたぐいもなし、梅忠の時のように、先以まずもって後日のたたりというものもないらしい。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
けれども、境内のお末社まっしゃには、皆が存じた、大分だいぶ悪戯いたずらずきなのがおいでになります。……奥の院の、横手を、川端へ抜けます、あのくらがり坂へ曲る処……
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
乗合は外に幇間たいこ末社まっしゃを加えて六人、船頭の直助なおすけに出来るだけ緩々ゆるゆるがせて、柳橋へ着いたのは亥刻よつ(十時)少し前、——船の中に持ち込んだ物では、どうも酒が飲めない
芸者、末社まっしゃのにぎわしい騒々しさの中に、長崎屋は、雪之丞に、杯をまわしながら囁く。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
総大将は若旦那の利太郎それに幇間ほうかん芸者等の末社まっしゃが加わり春琴には佐助が附き添って行ったこと云うまでもない佐助はその日利太郎始め末社からちょいちょいさかずき
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
紅白だんだらの幔幕に美々しく飾った大伝馬おおてんまへ、代地だいち幇間ほうかん藝者を乗せて、船の中央には其の当時兜町で成り金の名を響かせた榊原と云う旦那が、五六人の末社まっしゃを従え、船中の男女を見廻しながら
幇間 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)