あらたま)” の例文
あらたまつてのはなしとは何事なにごとだらうと、わたくしにわかにかたちあらためると、大佐たいさ吸殘すひのこりの葉卷はまきをば、まど彼方かなたげやりて、しづかにくちひらいた。
よく揶揄からかわれたり何かして来た気象の剽軽ひょうきんな青柳の弟に当る男だと思うと、あらたまったような気分にもなれなかった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
やはり、あすから年があらたまるとなると、かうした生活の場所でも、常よりも一層ざわざわと慌しく騒がしかつた。
大凶の籤 (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
晃 何、あらたまって、そんな心配をするものか。……晩方閉込とじこんで一燻ひといぶし燻しておくと、蚊が大分楽になるよ。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
クリストフは皮膚があらたまりつつあった。クリストフは魂が更りつつあった。
「さて、どうもあらたまりましては、何んとも申訳もうしわけのない御無沙汰ごぶさたで。いえ、もう、そりゃ実に、からすの鳴かぬ日はあっても、おうわさをしない日はありませんが、なあ、これえ。」
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今夜こんやあらたまつて、すこしおはなもうことがある。』とわたくしかほ凝視みつめた。
「余り気を入れると他愛たわいがないよ。ちっとこうあらたまっては取留めのない事なんだから。いいかい、」
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もっとも馴染なじみの相談も串戯じょうだんではないのだけれども。特にあらたまって、ついにない事、もじもじして
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
承れ、いかに近常——とあらたまる処だわね。手拭の床几しょうぎでさ。東京に美術工業大博覧会がある。
「破れかぶれは初手からだ。構うもんか!……あらたまって(清葉さん)。……」
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
火事場にゃ見物が多いから気が咎めるかして、誰もあらたまって喧嘩を買って出るものはなし、交番へ聞えたって、水で消さずに何で消す、おまけに自分の内だといや、それで済むから持ったもんです。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と大人しやかに真面目まじめな挨拶、殊勝な事と小宮山もあらたま
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
主税はあらたまって、慇懃いんぎんに手をいて
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とちょっとめつけた、があらたまって
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
急に二人はあらたまったのである。
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
金之助はややあらたま
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と再度あらたまって
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あらたまって——
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)