暗碧あんぺき)” の例文
西瓜もそのころには暗碧あんぺきの皮の黒びかりしたまんまるなもののみで、西洋種の細長いものはあまり見かけなかった。
西瓜 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
或晩ふと眼をさますと、窓の障子が明るかった。戸を開けて見ると、雲が晴れて、空は暗碧あんぺきだ。古沼に浮いた鏡のように青い月が出た。銀光がおののき戦き泳いで来る。
抜髪 (新字新仮名) / 小川未明(著)
また暗碧あんぺき白布しろぬのを織って矢を射るように里へ出るのじゃが、その巌にせかれた方は六尺ばかり、これは川の一幅ひとはばいて糸も乱れず、一方は幅が狭い、三尺くらい
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それは尾久おくわたしあたりでもあったろうか、のんどりした暗碧あんぺきなその水のおもにはまだ真珠色の空の光がほのかに差していて、静かにいでゆくさびしい舟の影が一つ二つみえた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
星がきらめき出した。其の光は鋭く其の形は大きくて、象徴的しやうちようてきな絵で見る如く正しく五つの角々かど/\があり得るやうに思はれる。空は澄んで暗碧あんぺきの色は飽くまで濃い。
黄昏の地中海 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
また暗碧あんぺき白布しろぬのつてるやうにさとるのぢやが、そのいはにせかれたはうは六しやくばかり、これかはの一はゞいていとみだれず、一ぱうはゞせまい、三じやくぐらゐ、このしたには雑多ざツたいはならぶとえて
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)