明白あきらか)” の例文
南部藩と仙台藩の区別ちがひが言葉の調子にも明白あきらかで、少しも似通つた所がないけれども、同県人といふ感じが渠をしてよく国訛りを出させる。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
エレミヤの慨歌は今は註解書に依らずして明白あきらかに了知するを得たり、放逐の作と見做してのみ〔ダンテの〕ディビナ、コメヂヤは解し得るなり
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
忠一は実家と角川家とのあいだを往来しながら、熱心に飛騨の古い歴史を研究して、飛騨判官の伝記及び彼と蒙古との関係を明白あきらかにすべく努めていた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
法律ほうりつてらしても明白あきらかだ、何人なにびといえども裁判さいばんもなくして無暗むやみひと自由じゆううばうことが出来できるものか! 不埒ふらちだ! 圧制あっせいだ!
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「金のことだから尚お明白あきらかにして置く必要があるだろう。一体幾らになるんだか分らないなんて月給取はないよ」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
下卑げびた言い草である。二、三の者は笑い声を立てたが、戸部近江之介は明白あきらかに嫌な顔をして、一そう憎悪に燃えるように、立ったまま喬之助を見下ろしている。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
法律はふりつてらしても明白あきらかだ、何人なにびといへども裁判さいばんもなくして無暗むやみひと自由じいううばこと出來できるものか! 不埒ふらちだ! 壓制あつせいだ!
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
下卑げびた言い草だった。二、三の者は笑い声を立てたが、戸部近江は、明白あきらかに厭な顔をした。一層憎悪に燃えるように突っ起ったまま、喬之助を見下ろしていたっけ……。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
更に人をおどろかしたのは、の山𤢖の最期であった。幾百年の昔から、口でこそ山𤢖と云うけれども、誰も明白あきらか其形そのかたちを認め得た者は無かった。しかるに今や白昼にの怪しき形骸をさらしたのである。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)