おせ)” の例文
「——芸は身を助けるいうこと、あんた知らんのんか。やって、ちゃんと三味をおせとけば、この子が大きなって、いざと言うときに……」
わが町 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「あれほどおらがおせえたによ、もうそんねなこといって来るようじゃしょあんめえじゃあ」和尚はこういってげっぷをした
百足ちがい (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
此の頃尼がしにやして子供らア字イ書くことがなんねえで、手におえねえが、淋しかんべえが旅金たびがねの出来るまで子供らに字イ書くことをおせえてくんろ
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
御祭日おさいじつでもねえのに、銀米ぎんまいの気でいやがらあ。だからけえれっておせえてやるのに」
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わっちが今立聞をしていたら、孝助の母親おふくろ咽喉のどを突いて、おなれさん方の逃げた道を孝助におせえたから、こゝへ追掛おっかけて来るにちげえねえから、おめえさんは此の石橋の下へ抜身ぬきみ姿なりで隠れていて
「ああ痛ア。無茶しなはんな。三味線おせるのがなにがいきまへんねん?」
わが町 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
しの「伊之助の手から線香一本手向けて貰っても、若草は嬉しくは受けめえが、おめえなんにも知らねえで使に来たんだから、われがには気の毒だから、寺の名前なめえだけおせえてくれる、中矢切の法泉寺ほうせんじといいやす」
「そない皆褒美もろたら、だいいち学校の会計くるうがな。だいたいお祖父やんのお前が読み書きのひとつもよう出来んといて、孫が勉強あかんいうて、怒る奴があるかい。なあ、君ちゃん他あやんちょっとも字イおせてくれへんやろ?」
わが町 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
仙「おせえてさえくれりゃアおめえは逃げてもいんだ」