挿花さしばな)” の例文
旧字:插花
室は綺麗きれいに掃除されたり。床の間の掛物、花瓶かびん挿花さしばな、置物の工合なんど高雅に見えて一入ひとしおの趣きあるは書生上りの中川がたしなみあらず。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
花笠を造つたり、小さな山車だしこしらへたり、山車の屋根を飾る挿花さしばなを考へたりして、キヤツキヤツと騒いで居るのでした。
女王 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
洋燈らんぷひかり煌々くわう/\かゞやいて、何時いつにか、武骨ぶこつなる水兵等すいへいらが、やさしいこゝろ飾立かざりたてた挿花さしばなや、壁間かべに『歡迎ウエルカム』と巧妙たくみつくられた橄欖かんらんみどりなどを、うつくしくてらしてる。
女王のように振舞っているのをよそに、美奈子は自分の離れの居間に、日本室の居間に、気に入りの女中を相手に、お琴や挿花さしばなのお復習さらいに静かな半日を送るのが常だった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
消し忘れた天井の電燈さえまた昨夜と同じように床の間の壁に挿花さしばなの影を描いている。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)