持崩もちくず)” の例文
ついこの間までは人のいやがる遊人あそびにんとまで身を持崩もちくずしていなすったのがしばらくのうち御本丸ごほんまる御勘定方ごかんじょうがたにおなりなさるなんて
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
こいつはもと品川で勤めをしていた三十女で、以前は武家の出だというが、自堕落じだらくの身を持崩もちくずして、女のみさおなんてものを、しゃもじのあかほどにも思っちゃいない。
がい剃頭店ていとうてん主人、何小二かしょうじなる者は、日清戦争に出征して、屡々しばしば勲功をあらわしたる勇士なれど、凱旋がいせん後とかく素行おさまらず、酒と女とに身を持崩もちくずしていたが、去る——にち
首が落ちた話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
蘿月は若い時分したい放題身を持崩もちくずした道楽の名残なごりとて時候の変目かわりめといえば今だに骨の節々ふしぶしが痛むので、いつも人より先に秋の立つのを知るのである。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
方角もはじめて判明致候間、急ぎ芝山内しばさんないへ立戻り候へども、実は今日こんにちまで、身は持崩もちくずし候てもさすがに外泊致候事は一度も無之、いつも夜の明けぬ中立戻り、人知れず寝床にもぐりをり候事故
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)