むか)” の例文
「殺さねえように捕まえる。それで、相手が刃物を持っていると、こっちも刃物でむかって行かにゃならねえ」と、考え考え首をひねって
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
と勢い烈しくむかいましたから、丹三たんざはこれにおくしてあとしさると、おえいは嫁入姿の儘で駆出し、可愛い丹三さんに怪我をさせてはならないと思い
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
づは重疊ちようでふむかつて齒向はむかつてでもられようものなら、町内ちやうない夜番よばんにつけても、竹箒たかばうき押取おつとつてたゝかはねばらないところを、とき敵手あひてげてくれるにかぎる。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
濃尾のあいだでは一矢も錦旗にむかってくるものはなく、十一月の寒烈はかぶとのびさしにあられを打ち、弓手も凍るばかりだったが、彼の頬にはたえず自負の信念か微笑かがあった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
払っても、むかっても、すがりよってくる黒法師のむれに、二人はまさに、おいつめられた形で。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)