打背うちそむ)” の例文
ふと、ひとしく、俄然がぜんとしてまた美少年びせうねんつて、婦人ふじん打背うちそむほゝてた。が、すらりといて、椅子いすつた。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
汗を流さんと風呂場に急ぐ廊下の交互すれちがひに、貫一はあたかもかの客の湯上りに出会へり。こたびも彼はおもてを見せじとやうに、慌忙あわただし打背うちそむきて過行くなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
と法師から打背うちそむく、とおもかげのその薄月の、婦人おんなの風情を思遣おもいやればか、葦簀よしずをはずれた日のかげりに、姥のうなじが白かった。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
満枝は打背うちそむけたる顔のなかばをシオウルのはしに包みて、握れる手をばいよいよ固くめたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
されども彼は猶目を放たず、宮はわざと打背うちそむきて、裁片畳きれたたふの内をかきさがせり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
と言懸けて、頬のこけた横顔になって打背うちそむいた。——小松原の肩のあたりから片面かたおも耳朶みみたぶかけて、天井の暗さがさかさまに襲ったのを、じっと見ながら、これがある婦人と心中しようとした男だとうなずいた。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)