息女むすめ)” の例文
同業者の息子息女むすめは大抵この人の肝煎きもいりで縁を結ぶ。出雲の神さまを住居の出雲町に引っかけて、宮地出雲守という綽名がついている。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
私はほかの金持の息子、息女むすめのようにたくさんの金をもらって長い間学校に行くことはできない。それではどうすればいいのであるか。
で、義元は、甲斐の信玄の嫡男ちゃくなん太郎義信たろうよしのぶに、自身の息女むすめを嫁がせ、信玄の息女を、北条家に嫁がせることを、かねてから策していたのであった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「娘(息女むすめ)よ」というのは、かつて中風の者に向かって言われた「子(息子むすこ)よ」(二の五)という言葉に相対する、きわめて愛情のこもった呼びかけです。
よにさちなきもの二ツあり。又幸あるものふたつあり。すなはち吾儕わなみなんぢなり。己れは国主の息女むすめなれども。義を重しとするゆゑに。畜生にともなはる。これこの身の不幸なり。しかれどもけがし犯されず。
春水堂がかねて雪之丞にめて書き下した、「逢治世滝夜叉譚ときにあうたきやしゃばなし」で、将門まさかど息女むすめ滝夜叉たきやしゃが、亡父の怨念うらみを晴そうため、女賊となり、遊女となり、肝胆を砕いて、軍兵を集め、妖術を駆使して
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
前者は大抵重役か頭取の息子で、銀行か会社に勤めている。後者は普通地方素封家そほうか息女むすめで、女学校卒業後ピアノか何かのお稽古中である。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
『霜解けのせいじゃよ。あの厳しい白翁の眼を見たか、まるで御鷹だ、なんであの眼の蔭でお息女むすめにそんな……』
御鷹 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
息女むすめよ」という温かい呼びかけとともに、彼女の信仰に対する絶賛と豊かな祝福とを賜わったのです。
ゆくりなくも世をのがれて。自得の門に三宝の引接いんぜうこひねがひしかば。遂に念願成就して。けふ往生の素懐をとげなん。…………またたゞ汝は畜生なれども。国に大功あるをもて。やがて国主の息女むすめを獲たり。
が、ようやく、その小閑しょうかんを得た日であった。彼は、息女むすめたちのつぼねへ来て、京都の土産物の数々をひらき、息女たちの喜びをながめて、彼も他愛ない半日をすごしていた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ゴッテンブルグの伯爵というのが王様巡行の折、三十六名の息子むすこ息女むすめを御覧に入れて、これが私の国家に対する貢献でございますと申上げたそうだ。意味深長じゃないか?
人生正会員 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
また、なんといっても、このわがままな老女性には、敵国をはかるなどという問題には興味もなかった。それよりは、ひとり息女むすめの盲愛のほうが、遥かに遥かに大きかった。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
息子と息女むすめの結婚でなくて、甥と姪の祝言にしてしまう。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そうして上人の身を荊棘けいきょくの門から抱え出すと、禅閤はまた、一方のわがむこと、いとしい息女むすめとが、事変以来どう暮しているか——それも心がかりでならなかったことなので
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
持萩もちはぎ中納言の息女むすめであったとか、彼はやぶ中納言保広やすひろ落胤おとしごであるとか、織田被官ひかんの足軽から帰農した百姓弥右衛門やえもんの子というのがまことであるとか、噂や蔭口もまちまちであったが
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まだ法体ほったいにならぬまえは——月輪関白兼実かねざねとして朝廟ちょうびょうの政治に明け暮れしていたころは、非常に気もたかく強く、七人もいる息女むすめたちのことにでも屈託くったくなどしたことのない性格であったが
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お駒とお由利は、由緒ゆいしょある大家の息女むすめだった。ここ数年間に、取潰とりつぶされた犠牲大名のうちの一家、加藤忠広の家老加藤淡路守の遺子わすれがたみで——先に死んだ綾部大機は、忠義無類なその家来であった。
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それが監視をさえ仰せつかっているものを……わが息女むすめを、その流人の妻などに……ば、ばかなっ、どう頭が狂おうが、そんなばかな事ができるものか、できぬものか、そちにも知れておろうが
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
八十一州の兵を、君の大禄をいただきながら、荊州を攻め取るぐらいなこともできず、わらわの最愛な息女むすめおとりにして玄徳をいざない、だまし討ちに殺して事を成そうとは……ええ、なんたる無能ぞ。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かすかな紙燭ししょくをともして、身まわりの品をまとめた幾ツもの行李こうりを、侍に渡しては、そっと、馬の背に積むやら、数正の妻を始め、息女むすめや、侍女こしもとたちが、各〻、身がるな旅支度を急ぎおうていたり
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
にわかに話はまとまった。いずれ山木家へ知れるにしても、大びらでない方がよい。彼の意気地をこっちから煽動してはまずい。——それに表向きまだ勘当の息女むすめ、配所の流人、どこまでも質素がよい。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「光秀には、たしか、息女むすめが多かったように聞いておるが」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
月輪禅閤つきのわぜんこう息女むすめです」と、かすかにうちでいう。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)