もた)” の例文
『家の方のす。ああ、可怖おつかながつた。』と、お定の膝に投げる樣に身をもたせて、片手を肩にかけた。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
一日いちにち四方八方しほうはつぽうはしあるいたためひどつかれてかへつてて、わたくしひざもたれたまゝ二人ふたりそら景色けしきながめてころ櫻木大佐さくらぎたいさ武村兵曹たけむらへいそうほか一隊いつたい水兵すいへい今日けふしごとをはつて
「あ、」と不意に呼吸いきを引いた。濡れしおたれた黒髪に、玉のつらなるしずくをかくれば、南無三なむさん浪にさらわるる、とせなを抱くのに身をもたせて、観念したかんばせの、気高きまでに莞爾にっことして
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)