心遣こゝろや)” の例文
ステーションへ行つて思ふ都会の駅名を恋人の名でも読むやうになつかしくながめるのも一種の心遣こゝろやりだつた。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
手筐てばこの底にめ置きし瀧口が送りし文、涙ながらに取り出して心遣こゝろやりにもり返せば、先には斯くまでとも思はざりしに、今の心に讀みもて行く一字毎にはらわた千切ちぎるゝばかり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
これだけを心遣こゝろやりに、女房にようばうは、小兒こどもたちに、まだばん御飯ごはんにもしなかつたので、さかあがるやうにして、いそいで行願寺内ぎやうぐわんじないかへると、路地口ろぢぐちに、よつつになるをんなと、いつつのをとこ
夜釣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
なに矢張やツぱりみち同一おんなじいたにもたのにもかはりはない、旧道きうだう此方こちら相違さうゐはないから心遣こゝろやりにもなんにもならず、もとよりれツきとした図面づめんといふて、ゑがいてあるみちたゞくりいがうへあかすぢ引張ひつぱつてあるばかり。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)