御緩ごゆっ)” の例文
「まあ御緩ごゆっくりなさい。母が帰っても別に用事はないんですから」と女は帰った人を迎える気色けしきもない。男はもとより尻を上げるのはいやである。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
持って来るだけの事でございます、又お前さん方が泊っている内は他の者は帰してしまいますから、お心置なく御緩ごゆっくりと泊っていらっしゃいまし
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「まだ御座いますようですね。じゃ、おあとにしましょう。御緩ごゆっくりと……」
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「いいえ、そんなでもないようですけれど、ふせっておりますから、おぐしはあげられませんでしょう。ですが、御緩ごゆっくり、まあ、なさいまし。この頃では、お増さんも気に掛けて、早く帰って参りますから、ほんとうに……お嬢さん、」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「はあ、たった今しがた出ました。おっつけ帰りましょう。どうぞ御緩ごゆっくり」と例の火鉢を出す。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
下女「これは有難うございます、まア御緩ごゆっくりおいでなせえましよ、滅多に汽船ふねは来ませんから」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そうでございましたか………何うもお二人様ともお雛様を一対ならべたようで………御緩ごゆっくりなすって、今旦那が帰って来ますと自分で手料理が出来ますが、生憎あいにく居ないから
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それでも気がすまなかったと見えて、自分が鞄の始末をした頃、あがぐちへ顔を出して、「おやもう御荷物の仕度をなすったんですか。じゃ御茶でも入れますから、御緩ごゆっくりどうぞ」
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
へい、どなた様も、毎日相変らずありがとう存じます。今日は少々御寒うございますから、どうぞ御緩ごゆっくり——どうぞ白い湯へ出たり這入はいったりして、ゆるりと御あったまり下さい。——番頭さんや、どうか湯加減を
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)