御幸みゆき)” の例文
「あすならば、お上も上清宮へ御幸みゆきなされて、ここへはお渡りもございませんのに。——どうぞ、これにおりなく、また」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
またお見せくださいました御幸みゆきに感謝の意もまだ表してお目にかけることができませんような不都合さも、また私が伺っておびすることにいたしましょう
源氏物語:36 柏木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
その際法皇の御幸みゆきがあったが、どこからうわさがとんだものか、後白河院が、山内の大衆に、平家追討の院宣を下したという話がまたたく間にひろまった。
大政おほまつりごとしげくして、西なる京へ君はしも、御夢みゆめならでは御幸みゆきなく、比叡ひえいの朝はかすむ共、かもの夕風涼しくも、禁苑きんゑんの月ゆとても、鞍馬の山に雪降るも、御所の猿辻さるつじ猿のに朝日は照れど
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
あの山城やましろの皇居を海に近い武蔵むさしの東京にうつし、新しい都を建てられた当初の御志おんこころざしに変わりなく、従来深い玉簾ぎょくれんの内にのみこもらせられた旧習をも打ち破られ、帝自らかく国々に御幸みゆきしたまい
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その病後の療養に、私は小田原の御幸みゆきはまへ一と月ばかりほど転地していたことがあった。ああ、あの頃だったなと思うと、私の追憶には青い青い広重ひろしげの海の色や朝夕の潮騒の音が響いて来る。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
当日になると各部落から屋台が出る。又だんじりといふ車を曳いて出る小村もあつた。神の御幸みゆきとも御出とも謂つて、神輿が里中を巡つて行かれる時刻には、老人でも家の中にゐる者は無かつた。
祭のさまざま (新字旧仮名) / 柳田国男(著)
白日の御幸みゆきは今日もある由なり
光箭 (新字新仮名) / 今野大力(著)
鶯や御幸みゆき輿こしもゆるめけん
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
あくる日はまた、上皇の御幸みゆきで、式事すべて、前日のごとく、便殿べんでんで上皇から尊氏兄弟へ、親しく賜酒ししゅのことがあり、夜に入って、還御かんぎょになった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この年の三月上旬、位を譲られた高倉上皇が、安芸の厳島へ御幸みゆきになるという話が伝わった。
御窮屈なお思いもなしに御幸みゆきなどもおできになることになって、あちらこちらと御遊幸あそばされて、今日の御境遇ほどお楽しいものはないようにお見受けされるのであった。
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
たゞその舞台を人が舁き、又は車を附けて曳きあるくやうになつたのは、昼間の御幸みゆきの路を賑はしくしようとした為で、是に氏子の者が出演するやうになつたのと共に、新らしい出来事と云つてよい。
祭のさまざま (新字旧仮名) / 柳田国男(著)
夏山の若葉立ちくぐ霍公鳥ほととぎすなれもなのらな君が御幸みゆき
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「法皇には、昨夜おそく、ひそかに院を忍び出られ、鞍馬より横川よかわを経て、義仲の陣営にあてられている延暦寺えんりゃくじ御幸みゆきあそばされてしもうたらしい」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
常に見し君が御幸みゆきを今日とえば
雷山いかづちやま御幸みゆきして
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
こういえば平家の退却は、予定のもとに、秩序整然と行われたようにもあるが、それは御幸みゆきのあった時刻の前後だけでいよいよ残る一門が、各〻の第宅ていたくに火を放って
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『ときに。院におかせられては、近くまた、安楽寿院あんらくじゅいんへ、御幸みゆきあるやにうけたまわるが』
いや、一般の者が、満足もこえて、感激にひれ伏したのは、はからずも、この安土城のうちにかつてありとも聞いていなかった「御幸みゆき」を、この日、拝観したことであった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
光厳こうごん光明こうみょう崇光すこうの三上皇も、御幸みゆきしていらせられたので、一山には、守護の武士たちや、公卿くげたちも、おびただしい数にのぼり、賊軍の襲来に備える兵馬兵糧のしろはもとよりのこと、永い年月のうちには
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さぞかし、今年は加茂の御幸みゆき(五月の祭)も人出を見よう」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)