御不沙汰ごぶさた)” の例文
最近も、私を、作者を訪ねて見えた、学校を出たばかりの若い人が、一月ばかり、つい御不沙汰ごぶさた、と手軽い処が、南洋の島々を渡って来た。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(前略)一昨々年春以来他へ転居候為め、御書面昨日やうやく落手致し候次第、その後の御不沙汰ごぶさた何とも申訳無之これなく候。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
「とうに伺うはずだったけれども、少し旅行していたものだから御不沙汰ごぶさたをして済みませんって」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
誠に御不沙汰ごぶさたいたします。ようやく涼しくなり候まま、近日御伺いいたします。九月十三日、鶴所。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
時間じかん都合つがふで、今日けふはこちらへは御不沙汰ごぶさたらしい。が、このかはむかうへわたつて、おほき材木堀ざいもくぼりひとせば、淨心寺じやうしんじ——靈巖寺れいがんじ巨刹きよさつ名山めいざんがある。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……いや、家内安全の祈祷きとうは身勝手、御不沙汰ごぶさたの御機嫌うかがいにおまいりしながら、愚痴ぐちを云ってちゃ境内で相済まない。……さあ、そろそろ帰ろう。(立ちかける。)
湯島の境内 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「やア、おめづらしい。うも、しばらく、なんとも御不沙汰ごぶさた大將たいしやううです、御景氣ごけいきは。」
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)