ひけ)” の例文
その上小林は斟酌しんしゃくだの遠慮だのを知らない点にかけて、たいていの人にひけを取らないように、天から生みつけられた男であった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
女「えゝ宿屋のは古うございますから、し又お帰りの時お邪魔なら私が方へひけを立って取りますから」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
殺してはすまず印形と脇差わきざしが證據なれば平四郎こそ幸之進が敵なりと思ひ定めて座敷のひけるを待居まちゐたり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
秋の仁和賀にわかにもひけを取らず、座敷へ出ても押されぬ一本、は清元で、ふり花柳はなやぎの免許を取り、生疵なまきずで鍛え上げて、芸にかけたら何でもよし、客を殺す言句もんくまで習い上げた蝶吉だ、さあ来い!
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もうおひけにしましょうと客間へ蚊帳を一抔に吊って源次郎を寝かし、お國はちゅう二階へ寝てしまいました。
聞直八それ高價たかいわしは百姓のことだから身にはすこしかまひは無い見てくれさへよければいゝほんの御祝儀しうぎざしもうちつと負て下さい道具屋否々いへ/\此品はかた代物しろものなれば夫よりは少しもひけやせんと是より暫時しばし直段ねだん押引おしひき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
主人「それじゃア、まだ貴様だまされて居るのじゃ、吉原のひけと云うのは十二時であろう」