幽暗ほのぐら)” の例文
障子の日が、もう蔭ってしまって、部屋には夕気ゆうけづいたような幽暗ほのぐらい影が漂うていた。風も静まったと見えて、外はひっそとしていた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
幽暗ほのぐらい帳場格子のなかで、算盤そろばんをはじいている四十ばかりの内儀かみさんも、そんなに田舎くさくはなかった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
喰積くいつみとかいうような物も一ト通り拵えてくれた。晦日みそかの晩には、店頭みせさきに積み上げた菰冠こもかぶりに弓張ゆみはりともされて、幽暗ほのぐらい新開の町も、この界隈かいわいばかりは明るかった。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)