幸福者しあはせもの)” の例文
「どうだい、これは、自分じぶんはまあなんといふ幸福者しあはせものだらう。こんやは、それこそおも存分ぞんぶんはらぱいうまい生血いきちにありつけるわけだ」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
成程さう聞いてみると、幸福者しあはせものだとも言へないらしかつた。飯と酒とそれから今一つの外には、別に世界のある事を知らないのが実業家のならはしだから……。
病のある身ほど、人の情のまこといつはりとを烈しく感ずるものは無い。心にも無いことを言つて慰めて呉れる健康たつしや幸福者しあはせものの多い中に、斯ういふ人々ばかりで取囲とりまかれる蓮太郎のうれしさ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
坊様も嬢様も無類の犬煩悩で入らつしやるから、爰の邸へ引取られてからは俺も飛んだ幸福者しあはせもので、今年で八年、つひに一度ひもじい目どころか、りやう四升しゝようの鬼の牙のやうなお米を頂戴してゐた。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
腐肉くされにくたか蒼蠅あをばへでもロミオには幸福者しあはせものぢゃ、風雅みやびた分際ぶんざいぢゃ。
「飯は食へない、酒は飲めない、加之おまけにその方もあかんとなつて見ると、君は何が楽みで幸福者しあはせものなんだい。」
ヅリヤンを盗んだ者は重く罰せられるがれて自然ひとりでに落ちたのを拾つた者は、飛んだ幸福者しあはせものとして羨まれるさうで、気の長い土人達は、ヅリヤンの鈴生すゞなりつた木蔭で
「思つとるよ、全く幸福者しあはせものだもの。」徳蔵氏は嬉しさが一杯で、泣き声をしながら言つた。