小糠星こぬかぼし)” の例文
その石舟斎に、いや武蔵のような無禄無名の一放浪者にくらべれば、月と小糠星こぬかぼしほども格のちがう大先輩に見参に入るのだ。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
黒松の葉がひに光る小糠星こぬかぼし風のおらびをは消えにける
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
彼にいわれたとおり、大悟たいごまなこをふさいで、もう生きる気も捨て、死ぬ気もすて、颯々と夜を吹くかぜと小糠星こぬかぼしの中に、骨のしんまで、冷たくなってしまったもののようであった。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
黒松の葉がひに光る小糠星こぬかぼし風のおらびをは消えにける
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
門のくぐり戸を開けて、その前に立って見送っていた性善坊の姿もすでに見えない、しきりと天地の寂寞せきばくてる暗い風があるばかりだった。白い小糠星こぬかぼし有明ありあけに近い空をいちめんにめていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雲のれ間に、小糠星こぬかぼしの光が、まだ鮮やかであった。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)