尊崇そんすう)” の例文
正成にも朝家にたいする尊崇そんすうはあるが、彼らに見られる熱病のような尊王とは全くちがう思いがする。しかし今はそれを問わなかった。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それかあらぬか、同地どうち神明社内しんめいしゃないにはげん小桜神社こざくらじんじゃ通称つうしょう若宮様わかみやさま)という小社しょうしゃのこってり、今尚いまな里人りじん尊崇そんすう標的まとになってります。
つう仕込じこみおん作者さくしや様方さまがた尊崇そんすうし其利益りやくのいやちこなるを欽仰きんぎやうし、其職分しよくぶんをもておもだいなりとなすは俗物ぞくぶつをし俗物ぞくぶつ渇仰かつがうせらるゝがゆゑなり
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
日頃尊崇そんすうしきつて居る錢形平次が、不意に訪ねて行つたことが、どんなに叔母さんを驚かしたことでせう。
偶像ぐうぞうの利益功力こうりよくを失ふと云ふが如きかんがへは存し得べき事にして、尊崇そんすうすべき物品が食餘しよくよ汚物おぶつと共に同一所に捨てられしとするも敢てあやしむべきには非ざるなり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
そこにはシナの関羽かんうも祀ってある。チベットでは関羽の事をゲーサルギ・ギャルポ(花蕊はなしべの王という意味)というて、悪魔をはらう神として大いに尊崇そんすうして居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
洲先は頼朝が石橋山のいくさに負けて、安房へ落ちて来たときに初めて上陸したところで、おなじ源氏の流れを汲む里見の家では日ごろ尊崇そんすうしている神社であるから
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ていよき言葉を用いて隠蔽いんぺいし、あん自慢じまんするごとくに聞こゆるでもあろうが、正直に自白すれば、近来になって僕もゲーテを尊崇そんすうするの念が、十年前にくらべて増してきた。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
真に尊崇そんすうすべきものと呼び得るのは、ただ、人間的なもののあらゆる段階で、特徴的な生産をするだけの力を授けられた、芸術家の生活のみだ、という意見だったからである。
日本の天皇で有名なのは、神武、天智、後醍醐ごだいご明治めいじの四人であるが、ほんとうに英雄とか、偉人とかいうほどの人物ではなかった。明治以後、天皇尊崇そんすうの名が、政略的に高くかかげられた。
今の内は社会に制裁がないから幇間的ほうかんてき文学や軽業的かるわざてき文学が跋扈ばっこしているけれども他日社会が規律的に整頓せいとんして文字もんじを読まず精神を読むという時代になったら大原君の如き人が最も尊崇そんすうを受けるだろう。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
かれらの尊崇そんすうまととして起居をともにすることとなったのだった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
わがはいはつねに男伊達だての制度を景慕けいぼする者である。なかでも幡随院長兵衛ばんずいいんちょうべえのごときは、これを談話に聞いても、書籍に読んでも、じつに我が意を得たものとして尊崇そんすうせざるを得ぬ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)