嫣然につこり)” の例文
入口を見ると、三分刈のクリ/\頭が四つ、朱鷺色ときいろのリボンを結んだのが二つ並んで居た。自分が振り向いた時、いづれも嫣然につこりとした。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
整つた輪郭を一瞬に見て取つた時、彼女の眼はもう嫣然につこりと笑ひかけてゐた。そして淑かな會釋をした。私も慌てゝ禮を返した。
受験生の手記 (旧字旧仮名) / 久米正雄(著)
「でも、貴君あなたなんか、さうした女性は、お好きぢやありませんでせうね。」さう、信一郎の耳に、あたゝかく囁いて置きながら、夫人は顔を少し離して嫣然につこりと笑つて見せた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
僕らに言つては惡るい事かと問はれるに、いゑ貴君には聞て頂きたいのでござんす、醉ふと申ますから驚いてはいけませぬと嫣然につこりとして、大湯呑を取よせて二三杯は息をもつかざりき。
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
にんみゝおなじくさそはれたやうに一しゆ調子てうしつたとなりにはひゞきみゝかたむけつゝ沈默ちんもく時間じかん繼續けいぞくした。おつたは茶柱ちやばしらつた茶碗ちやわんなかてそれから一寸ちよつと嫣然につこりとしてたり、にははうたりしてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
うまく言つてるよ。』とお大は嫣然につこりともしない。
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
入口を見ると、三分刈りのクリ/\頭が四つ、朱鷺色ときいろのリボンを結んだのが二つ並んで居た。自分が振り向いた時、いづれも嫣然につこりとした。
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
そして私の方を振り向いて、嫣然につこりと笑つた。二度目の短銃からは耳を蔽うた。彼女はよく奇術師の片言半語に笑つた。笑ふ毎に彼女の體の動搖がすぐ傍の自分にも傳るやうであつた。
受験生の手記 (旧字旧仮名) / 久米正雄(著)
僕らに言つては悪るい事かと問はれるに、いゑ貴君あなたには聞て頂きたいのでござんす、酔ふとまをしますから驚いてはいけませぬと嫣然につこりとして、大湯呑を取よせて二三杯は息をもつかざりき。
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「私よ。私来たのよ。」彼女は嫣然につこりして見せた。
或売笑婦の話 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
夫人は、さう言ひながら、嫣然につこりと笑つて見せた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
鹽辛しよつぺえやまさか」かれ嫣然につこりとしなが
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ぼくらにつてはるいことかとはれるに、いゑ貴君あなたにはきいいたゞきたいのでござんす、ふとまをしますからおどろいてはいけませぬと嫣然につこりとして、大湯呑おほゆのみとりよせて二三ばいいきをもつかざりき。
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)