始終しょっちゅう)” の例文
「道庵さんは始終しょっちゅう懇意こんいに致しておりますけれど、あの娘さんがどうしたことやら、文面が何のことやら、のみこめませんものですから」
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
本当ほんとにお客様がみんな一番さんのようだと、下宿屋も如何様どんなに助かるか知れないッてね、始終しょっちゅう下でもお噂を申してるンでございますよ……
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
肌理きめの細かい、それでいて血気ちのけのある女で、——これは段々あとになって分ったことだが、——気分もよく変ったが、顔が始終しょっちゅう変る女だった。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「ますます弁解が苦しいが、朋友ともだち交誼よしみに、店がいそがしかったと云うことにしておいてやろう」と、岩本は始終しょっちゅう笑っていた。
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
物は最初はじめが大切だそうだ。初めて逢った時可厭いやだと思った人は何時までも可厭だとは、お花姉さんの始終しょっちゅう言う事だ。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
始終しょっちゅう人のすきを狙ってるような眼附をしてるじゃないか。私もうあれを見ると身震いがするようだ。今のうちにどうにかしないと、私達の方が負かされっちまうよ。
少年の死 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
わたしも無いつもりだ。御前がそう云ってくれるたんびに、御礼は始終しょっちゅう云ってるじゃないか」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
だんだんおにのようなこころになって、いつもこのかたきにして、ったり、たたいたり、家中うちじゅう追廻おいまわしたりするので、かわいそうな小児こどもは、始終しょっちゅうびくびくして、学校がっこうからかえっても
品川では軍艦ふねの方が大のお花客とくいでげすから、花里もその頃はまだ出たてゞはございますし、人々から注意をうけておろそかならぬ※待もてなしをいたしたので、海上も始終しょっちゅう通ってられましたが
……随分、ふてえ、小癪に障る、それこそ人の小股をすくうようなことばかり始終しょっちゅうしちゃァいるが、もと/\そんな悪党じゃァない。——そんな大それた真似の出来る大百だいびゃくじゃァない。
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
「いいえ、ほんとうです。これじゃ、あたし凍っちまいますわ。あなたは始終しょっちゅう出あるいてらっしゃるから、お解りにならないでしょうけど、このままじゃ、あたしの体は凍っちまいますわ」
初雪 (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
こう駕籠の中で呟いていることが始終しょっちゅうではないか。これを要するに、かくまで、かくのごとくにまで、一から十まで百まで千まで師匠おもって、おもい抜いて止まらざるこの私ではないか。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
真紀 それで、あなたにも始終しょっちゅうそんな話をするの文学とか、芝居とか。
みごとな女 (新字新仮名) / 森本薫(著)
「つゆ子さんとは始終しょっちゅう一緒でしたか。」と彼氏がききます。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それではどうもお位牌に対しても済まぬから、おれ始終しょっちゅう其が苦になっての……と眼をしばだたかれた時には、私も妙な心持がした。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
秋になってから始終しょっちゅう雨が降り続いた。あの古い家のことだから二所ふたところも三所も雨が漏って、其処ら中にバケツやたらいを並べる。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「新井君なんか始終しょっちゅう青い顔をしているんだから、海岸へ行って色揚げをして来る必要がある。逗子へ遣ろうよ、何うせ今月一杯宿が明いているんだから」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
神尾主膳はその後しばらく、病気と称して引籠ひきこもっておりました。引籠っている間も、分部とか山口とかいうその同意の組頭や勤番が始終しょっちゅう出入りしていました。
昨年の暮ごろからでございますよ、元は無邪気で、きびきびして、始終しょっちゅう旦那に小遣をねだって、旦那がうるさがると、わっしが仲へたってもらってあげるものだから、戦争から帰ってらしても、わっし
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
あんなふてえ罰あたりはねえ。——始終しょっちゅう金平さんはそういっているんだ。
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
暇さえあると他の噺を、講釈を、猿若町の芝居へさえ、始終しょっちゅうでかけてゆくようになった。そうしては自分の芸の明るく色好く「紫」たることをいやが上にも苦労し、工夫し、砕心してやまなかった。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
八「オイ熊ア、手前てめえ大層景気がいゝな、始終しょっちゅう出かけるじゃアねえか」
真紀 あさ子なんか、始終しょっちゅうめてますよ。
みごとな女 (新字新仮名) / 森本薫(著)
先達て中始終しょっちゅう秋雨あめの降り朽ちているのに、後から後からと蕾を付けて、こん好く咲いているな、と思って、折々眼に付く度に、そう思っていたが、其れは既う咲き止んだ。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「あすこはこのごろ、役人が出入りをしている、滝の川の方に普請事ふしんごとがあって、それであの家が会所のようなことになっているから、上役人が始終しょっちゅう出入りをしているんだ」
「それじゃお貰いになった後が大変ですわね。始終しょっちゅうなら心臓が弱ってしまいましょう」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
始終しょっちゅう板にへばりついていることです」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)