にょ)” の例文
それとも私が人間でなくなるのか? ……何方どっちだか其は分らんが、兎に角互の熱情熱愛に、人畜にんちく差別さべつ撥無はつむして、渾然として一にょとなる。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
その代りに、今度は珠子を非難し、君の脚を売ることを望むような女性は外面がいめんにょ菩薩ぼさつ内心ないしんにょ夜叉やしゃだといって罵倒ばとうした。
大脳手術 (新字新仮名) / 海野十三(著)
法がしからしむる所にいればよいのである。これが「自然法爾じねんほうに」の教えである。そういう境地を仏徒は「にょ」といったのである。この「如」のみが不動不変なのである。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
のみならず双方の五体と得物えものの一にょなうごき方は、とても肉眼に依って見て取ることは難かしい。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
生も嬉しくない、死も悲しくない、というのはみんなうそです。生は嬉しくてよいのです。死は悲しんでよいのです。「生死しょうじにょ」と悟った人でも、やっぱり生は嬉しく、死は悲しいのです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
にょとなる。だから、今でも時々私は犬と一緒になって此様こんな事を思う、ああ、儘になるなら人間のつらの見えぬ処へ行って、飯を食って生きてたいと。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
仏教で「にょ」というのは、「平」と別ものではない。「平」の状態こそ、健康なのである。これを「無事」という言葉で臨済禅は説く。もとよりこれは「有事」の対辞ではない。
改めて民藝について (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
物心ぶっしんにょ其様そん印度いんどくさい思想に捕われろではないが、所謂いわゆる物質的文明は今世紀の人を支配する精神の発動だと
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)