太公望たいこうぼう)” の例文
ここは唐土もろこしで、自分はしゅう武王ぶおうの軍師で太公望たいこうぼうという者であると彼は名乗った。そうして、更にこういうことを説明して聞かせた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「あなたが賢人を慕うことは、ちょうど太公望たいこうぼうのところへ通った文王のようです。ご熱意にはほとほと感じいるほかありません」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それどころか針をつけた様子もない——太公望たいこうぼうじゃあるまいし毎晩夜釣りに行く人間が針をつけたことがないなんて想像も出来ないじゃないか。
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
然し帰って来ると、爺さんは四の五の云わずに依然かみさんのすわらした。太公望たいこうぼうの如く意地悪ではなかった。夫婦に娘が出来て、年頃になった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
太公望たいこうぼう然として百本杭にこいを釣つて居るのも面白いが小い子が破れたざるを持つてしじみを掘つて居るのも面白い。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
眼を見合せた両人ふたりの間には何らの電気も通わぬ。男は魚の事ばかり考えている。久一さんの頭の中には一尾のふな宿やどる余地がない。一行の舟は静かに太公望たいこうぼうの前を通り越す。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すなわち輿論よろん伯夷叔斉はくいしゅくせいつみせんとした。このとき太公望たいこうぼうは独特の意見を述べて
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
太公望たいこうぼうがはりひなきひとをつく/″\とうらみて御新造ごしんぞいでられぬ。
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「拙者ごときの類ではありません。——それを今日の人物と比較することは困難で、古人に求めれば、周の太公望たいこうぼう、漢の張子房ちょうしぼうなどなら、彼と比肩ひけんできるかもしれませぬ」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
太公望たいこうぼうがはり合ひなき人をつくづくと恨みて御新造いでられぬ。
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「否々。あの孔明が何でみだりに自己を過分に評価しよう。わしからいわせれば、周の世八百年を興した太公望たいこうぼう、或いは、漢の創業四百年の基礎をたてた張子房ちょうしぼうにくらべても決して劣るものではない」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)