大蛸おおだこ)” の例文
屋根へ手をかけそうな大蛸おおだこが居るかと思うと、腰蓑こしみの村雨むらさめが隣の店に立っているか、下駄屋にまで飾ったな。みんな極彩色だね。
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
夫を奪おうとした憎むべきリメイに断乎としてヘルリスを挑むべく、海盤車ひとでに襲いかかる大蛸おおだこの様な猛烈さで、彼女はア・バイの中に闖入ちんにゅうした。
南島譚:02 夫婦 (新字新仮名) / 中島敦(著)
そのうちでも音松君が洞穴の中からおどり出す大蛸おおだこと戦った記事を大変面白がって、同じ科の学生に、君、蛸の大頭を目がけて短銃ピストルをポンポン打つんだが
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
うすぼんやりした光を放っているその怪物は、何だか大蛸おおだこのようなところがあった。頭がすこぶる大きくて、目玉がとび出しているところは、蛸そっくりであった。
火星兵団 (新字新仮名) / 海野十三(著)
手槍ピスカン大蛸おおだこを突きそこなって胸や腹に吸い付かれ、身体中れ上ることもある。巨魚タマカイに追われて生命いのちからがら独木舟カヌーに逃げ上ることもある。たらいほどもある車渠貝アキムに足を挟まれ損ったこともある。
南島譚:01 幸福 (新字新仮名) / 中島敦(著)