大般若だいはんにゃ)” の例文
また大床のすみにすえてあった大般若だいはんにゃ経唐櫃きょうからびつのまえに立ち、中の経文きょうもんをつかみ出して、その底までをしらべていたが、やがてのこと
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
組み伏せて『大般若だいはんにゃ』を繰り、『心経しんぎょう』を読み、大勢集まりて一心に祈りければ、山々の天狗名乗りつつ退く。
迷信解 (新字新仮名) / 井上円了(著)
また古来の伝説に龍樹菩薩が龍宮りゅうぐうに降って大般若だいはんにゃの妙典を得て来たという穴はやはり岩でふたがしてある。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
俊寛 あの時成親殿は八幡はちまん甲良大明神こうらだいみょうじんに百人の僧をこもらせて、大般若だいはんにゃ七夜ななよの間ぎょうじさせました。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
仏餉ぶっしょう献鉢けんばち、献燈、献花、位牌堂いはいどう回向えこう大般若だいはんにゃの修行、徒弟僧の養成、墓掃除そうじ、皆そのとおり、長い経験から、ずいぶんこまかいところまでこの人も気を配って来た。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
聖護院無品親王しょうごいんむほんしんのう(静恵)が御違例の時、医療の術を尽されたが、しるしが無い。大般若だいはんにゃの転読、祈祷皆そのしるしなく既に危くおわしました時、上人を招請されたことがある。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
わが昔の家に近かりし処に禅宗寺ありけるが星を祭るとてしょくあまたともし大般若だいはんにゃの転読とかをなす。本堂ののきの下には板を掲げて白星黒星半黒星などをえがき各人来年の吉凶を示す。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
この際、人心を善導し、天下の泰平をいのり、あわせて上洛じょうらく中の将軍のためにもその無事を祈れとの意味で、公儀から沙汰さたのあった大般若だいはんにゃ荘厳おごそかな儀式があの万福寺で催されているのだ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)