大垣おおがき)” の例文
そのころになると東山道軍の本営は美濃まで動いて来て、大垣おおがきを御本陣にあて、沿道諸藩との交渉を進めているやに聞こえて来た。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
これが大垣おおがきに近づくにつれて、大垣の城主氏家行広うじいえゆきひろも来て合し、曾根の城主稲葉一鉄も参加し、秀吉にえっして麾下きかに属した。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伊吹山はあたかもこの関所の番兵のようにそびえているわけである。大垣おおがき米原まいばら間の鉄道線路は、この顕著な「地殻ちかくの割れ目」を縫うて敷かれてある。
伊吹山の句について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
彼の名は山県銀之丞やまがたぎんのじょうという。大垣おおがき石川備前守いしかわびぜんのかみ家臣で、父を珂右衛門かえもんといい、五百石で国許勘定役を勤めていた。
武道宵節句 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
駒井甚こまいじんろう喜田川頼母きたがわたのも寺門一馬てらかどかずま大垣おおがき郎右衛門ろうえもんなど、側近の面々、おくれじとつづきながら、これはえらいことになった、この小藩に日光お出費ものいりとは
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
大垣おおがきの附近にはゴチソウサンゴト、信州でも上田うえだ地方にはヨバレッコもしくはオンバレコ、これは新旧二つの方言のたがいに接近してまぎれやすくなった例である。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
あの大垣おおがきの菅野未亡人までが出席すると云い出す有様で、近頃派手な披露宴になることが予想された。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
あの濃尾のうび大地震おおじしんがございました年で、あれ以来この大垣おおがきもがらりと容子ようすが違ってしまいましたが、その頃町には小学校がちょうど二つございまして、一つは藩侯の御建てになったもの
疑惑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
朝眼が覚めたのは大垣おおがきあたりだった。娘さんは床の上へハンカチを落してよく眠っていた。昨日は灯火あかりが暗くてよく分らなかったけれども、本当に泣いたのだろう、まぶたあかくふくらんでいた。
田舎がえり (新字新仮名) / 林芙美子(著)
美濃の大垣おおがきあたりに生まれた青年で、異国の学問に志し、遠く長崎の方へ出発したという人の話なぞも、決してめずらしいことではなくなった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
大垣おおがきまで、筑前の名代みょうだいとして、使いに行ってこい。正使には、浅野弥兵衛やへえをつかわす。弥兵衛についてまいるのじゃ」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
太古の大地変の痕跡こんせきを示して、山骨を露出し、急峻きゅうしゅんな姿をしているのであるが、大垣おおがきから見れば、それほど突兀とっこつたる姿をしていないだろうという事は
伊吹山の句について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
主君から一伍一什いちぶしじゅうを聞いた高大之進こうだいのしん大垣おおがき郎右衛門ろうえもん寺門一馬てらかどかずま駒井甚こまいじんろう喜田川頼母きたがわたのも面々めんめん、口々に
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
大垣おおがき藩の侍医をしていた細香の家と菅野家とは交際があったらしく、細香の父蘭斎らんさい尺牘せきとくなども残っていることなどが話題になって、未亡人と沢崎との間に暫くその方面の閑談が弾み
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「これから君の足で木曾街道を下って行ったら、大垣おおがきあたりで総督の一行に追いつきゃしないか。」
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
大垣おおがきの女学校の生徒が修学旅行で箱根はこねへ来て一泊した翌朝、出発の間ぎわに監督の先生が記念の写真をとるというので、おおぜいの生徒が渓流けいりゅうに架したつり橋の上に並んだ。
災難雑考 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
秀吉は、多芸郡たきごおりの要所に、後日のためのるいを築かせて、十三日、大垣おおがきまで帰った。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
柳生やぎゅうの里から応援に江戸入りした高大之進こうだいのしんを隊長とする一団、大垣おおがき郎右衛門ろうえもん寺門一馬てらかどかずま喜田川頼母きたがわたのも駒井甚こまいじんろう井上近江いのうえおうみ清水粂之介しみずくめのすけら二十三名の柳門りゅうもんり抜きの剣手は、麻布本村町あざぶほんむらちょう
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
もっとも、幸子あてに来た姉の手紙を読むと、少し頼りないようなところもあって、飛び着く程の縁談とも云えないのであるが、ありようは、義兄の長姉が縁付いている大垣おおがき在の豪農に菅野すがのと云う家があり
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
病気の手当ては言うまでもなく、寛斎留守中は大垣おおがきの医者を頼み、おりから木曾路を通行する若州じゃくしゅうの典医、水戸姫君の典医にまですがって診察を受けさせたことも書いてよこした。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「家は、岐阜ぎふ大垣おおがきのあいだの、小野おのさとでございます。その小野を出て、稲葉山いなばやまの裏道で、連れの者と、待ちあわせる約束をしたのに、どうしたのか、その男がもどって来ませぬ……」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「しかし、清助さん、大垣おおがきのことを考えてごらんな。あの大きな藩でも、城を明け渡して、五百七十人からの人数が今度のお供でしょう。福島の御家中でも、そうはがんばれまい。」
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
無事、慰問も終ったので、使者たちは、あくる日の早朝、大垣おおがきを立った。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)