培養ばいよう)” の例文
これを草木にたとうれば、みどりやなぎくれないの花と現れる世の変化も思想なる根より起こるものであるから、なにはさておき根の培養ばいようおこたれない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
市街しがい中心地ちゆうしんちける潰家かいかもとに、大火災だいかさいとなるべき火種ひだね培養ばいようせられつゝあつたことを氣附きづかないでゐたのである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
「おお」と細菌科長は苦笑にがわらいをしながら足を停めた。「駄目、駄目、ワクチンどころか、まだ培養ばいようできやせん」
(新字新仮名) / 海野十三(著)
今年は朝顔の培養ばいように失敗した事、上野うえのの養育院の寄附を依頼された事、入梅にゅうばいで書物が大半びてしまった事、かかえの車夫が破傷風はしょうふうになった事、都座みやこざの西洋手品を見に行った事
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
日本に作っている芍薬しゃくやくは、中国から伝わったものであろう。今は広く国内に培養ばいようせられ、その花が美麗びれいだから衆人しゅうじんに愛せられる。中国では人に別れる時、この花を贈る習慣がある。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
興味がこれを培養ばいようして次々に今の形まで成長せしめたので、その久しい前後の伝記を切離きりはなし、単なる一時代の横断面のみをもって、その本質を説こうとするは心得違いなことでなければならぬ。
外面の体裁ていさいに文野の変遷へんせんこそあるべけれ、百千年の後に至るまでも一片いっぺんの瘠我慢は立国の大本たいほんとしてこれを重んじ、いよいよますますこれを培養ばいようしてその原素の発達を助くること緊要きんようなるべし。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
博士はくしのへやのしょだなには、ぎっしりと本がつまっている。自然科学しぜんかがく薬理学やくりがくの本がおもで、まどぎわのつくえには、けんびきょう、スライド、培養ばいようえき、くすりのびんなどが、いちめんにならべてあった。
わがくにおいては餘震よしん恐怖きようふするねんとくつよいが、それはみぎ言葉上ことばじようあやまりによりても培養ばいようせられてゐるのである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
では、御免ごめん遊ばせ。まア博士せんせいの研究室の此の異様いようなる感覚は、どうでしょう! まるでユークリッドの立体幾何室を培養ばいようし、それにクロム鍍金めっきを被せたようですワ。
遊星植民説 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その輸出ユリの第一はヤマユリ、次がテッポウユリ、次がカノコユリという順序だろう。これらのユリは、日本でなるべくその球根を大きくなるように培養ばいようして、その球根を輸出する。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
博士は、かびの一種が、そういうことに強い働きのあることを発見し、自分の研究室でそのかびを培養ばいようしては、いろいろな虫やモルモットや猫に植えていたのである。
透明猫 (新字新仮名) / 海野十三(著)