“嘶(な)” の例文
仕方がないから家と云うが、実のところは、家じゃもったいない。牛さえいれば牛小屋で馬さえ嘶(な)けば馬小屋だ。何でも草鞋(わらじ)を売る所らしい。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と真実(ほんとう)の心から五八が慰め居りますと、馬小屋で青という馬がヒン/\と嘶(な)いて、バタ/\と荒れる事一方(ひとかた)ならぬ物音に、五八は慌てゝ駈出して往って見るに
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
馬の口輪でも外(はず)したか、悍気(かんき)を立てた一頭が、耳、鬣(たてがみ)を打振って、高く嘶(な)いた。あわててそれを叱りながら、組の部将は飛びついて、馬の首をふところへ抱(だ)きしめた。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馬の嘶(な)き声を所望(しょもう)されて、牛の鳴くまねと間違えて勇に怒(おこ)られ、家(うち)じゅうを笑わせた。
河霧 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「ああ、奴さんここにござつたのかい!」と、木の頂上(てつぺん)から羊の頭が嘶(な)いた。
あまつさへ赤き花ちり小馬嘶(な)く農家の白日(ひる)になげき入りぬる
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
お馬も嘶(な)いた わたしも泣いた
未刊童謡 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
詮(せん)ずれば馬も仏(ほとけ)の身なれども灸(やいと)すゑられて嘶(な)けばかなしも
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「物を言ふのも怖ろしいわい!」と、羊の頭が嘶(な)いた。
「お馬になれ。お馬になってヒンと嘶(な)け」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
嘶(な)くな。後生だから。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)