呼子よぶこ)” の例文
唐津より西北、佐志をすぎ、唐房からぶさより上りて一帯の高原をよぎる、くだればすなはち呼子よぶこ、そのあひだおよそ五里ばかり。
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
この密告書はアイツの筆跡に相違ないよ。ここに来て吾輩の窮状を見ると間もなく書上げて、識合しりあいの船頭に頼んで、呼子よぶこから投函さしたものに違いないんだ。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
岡っ引は追いながら呼子よぶこを吹いた、えた寒気をつんざいて鋭い笛の音が流れた。
お美津簪 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
貴婦人きふじんはふとくちびるに小さなぎん呼子よぶこぶえを当てて、するどいを出した。
肥前の呼子よぶこち知っとんなはろが。彼処あっこん王さまんごたっとたい。よか親子ですもんな。三等に乗っとりますばってん、そりゃ貴族院議員の資格もあるちいいよりましたばい。鯨ん鑵詰ばこさえとる。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
ピリ、ピリ、と、彼の女が呼子よぶこを吹くと、三人のニグロが其処そこへやって来て、見物席へお辞儀じぎをした。くちびる毒草どくそうの花のようにあかい、煙草たばこの葉のような皮膚の色を持った、恐ろしく背の高い蛮人ばんじんである。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
これは……投函局が佐賀県の呼子よぶこか……おかしいな。あすこにも吾輩の乾児こぶんが居るには居るが……大正九年八月十五日……憂国の一青年より……堅田検事総長閣下……フーム。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「七ツ釜」にあそぶには、呼子よぶこより船をやとふこと便なり。
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
ピーと、玩具人形の駅長さんの呼子よぶこが鳴った。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
この風を間切まぎって呼子よぶこへ廻わってんか。途中でインチキの小判と気が付いて引返やいて来よったらかなわん。和蘭陀オランダ船は向い風でも構いよらんけに……呼子まで百両出す。百両……なあ。
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
仮屋かりや呼子よぶこ、及び唐房とうばう湾の如きは、その例なり。
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)