おん)” の例文
獨りでお留守してゐると、横濱とは違つて不安心で淋しくつてならなかつたのですけど、馴れると何處だつておんなじことですわね。
見学 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
「いえ、思っているのとおんなじだというのです。実際どこにも変りがなければ、そう云われたってしようがないじゃありませんか」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「婆や、小便は涙の一種類で、水とおんなじもんだ……じゃなかったかな……とにかくそういうことを知ってるか、はははは」
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「太政官はえらいのやが、俺等とおんなしで、字を知らん明盲あきめくらやさかい、何にも役はせえへんのやなア。」
太政官 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
だから作をする時にゃ、精神は非常に緊張させるけれども、心には遊びがある。丁度、撃劒で丁々と撃合っては居るが、つまり真劒勝負じゃない、その心持とおんなじ事だ。
私は懐疑派だ (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
わしが借りとるぶんもおんなじやうな田圃でなあ。どうも大した年貢なんです。若いうちはええが、年を取つてからだが弱つて來るちうと、なんぼにも根氣が續かんけんなあ。
続生活の探求 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
「そう。く行くわ。だけれど、大抵近所の活動にするわ。おんなじだもの。」
寺じまの記 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「うん旨けりゃそれでいい訳だ。しかしその旨さが十銭均一の一品いっぴん料理とおんなじ事だと云って聞かせたら亭主も泣くだろうじゃないか」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ひと頃の土地熱も、まア夢みたいなもんやつたなア。……蘭や萬年青の變種が千兩もしたんとおんなしやろかい。……それにこんな在所の山ん中で、坪十五圓の二十圓のて、そんな相場が何處から立つもんかい。」
太政官 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
しゃべってつぶすのも、黙って潰すのも、どうせ僕見たいな穀潰ごくつぶしにゃ、おんなし時間なんだから、ちっとも御遠慮にゃ及びません。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
救って上げる事が出来なかったら、どうなさる。いくら偉くっても駄目じゃありませんか。無能力な事は車屋とおんなしですもの
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「いったい直は愛嬌のあるたちじゃないが、御父さんやわたしにはいつだっておんなじ調子だがね。二郎、御前にだってそうだろう」
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あれを御覧な、あれじゃまるであかの他人がおんなじ方角へ歩いて行くのと違やしないやね。なんぼ一郎だって直に傍へ寄ってくれるなと頼みやしまいし
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この御神さんは浜のものだとか云って、意気な言葉使いをしていたが、新しい折手本おりでほんを二冊出して、これへどうぞおんなじものを二つ書いて下さいと云った。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
婆さんはまた黙って文銭ぶんせんの上をながめていたが、前よりは重苦しい口調で、「まあおんなじですね」と答えた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
するかただけあって、なかなかお上手じょうずね。からっぽな理屈を使いこなす事が。世の中が嫌いになったから、私までも嫌いになったんだともいわれるじゃありませんか。それとおんなじ理屈で
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
妙なのね、そんなに厭がるのは。——厭なんじゃないって、口では仰しゃるけれども、貰わなければ、厭なのとおんなしじゃありませんか。それじゃ誰か好きなのがあるんでしょう。その方の名を
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
妙なのね、そんなにいやがるのは。——いやなんぢやないつて、くちではおつしやるけれども、もらはなければ、いやなのとおんなしぢやありませんか。それぢやだれきなのがあるんでせう。其方そのかたの名をおつしやい
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おんなじだ、僕の見る所では全く同じだ。少しも変っていやしない」
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
おんなじだ、ぼくの見る所では全くおんなじだ。すこしもかはつてゐやしない」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「何せまい所だ。どこをどう間違えたって、帰れるのはおんなじ事だ」
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
無能力な事は車屋くるまやおんなしですもの
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)