南風みなみかぜ)” の例文
海の南風みなみかぜをうけている浜松の夏は、日盛りでもどこか磯風の通う涼しさがありましたが、夜は海の吐き出す熱気ねっきのために、却ってむし暑い時もあるのでした。
虫干し (新字新仮名) / 鷹野つぎ(著)
そらは、ドンヨリくもツて、南風みなみかぜはひみやこまはり、そしてポカ/\する、いや其所そこらのざわつく日であツた、此様な日には、頭に故障こしやうのない者すら氣が重い。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
山三郎はじり/\して居りますが、何うも仕方がない、朝の内は西風ならいが吹き、昼少々前から東風こちから南風みなみかぜに変って、彼是れ今の四時頃に漸く浦賀へ這入りました。
「おじさんのいったように、ばん南風みなみかぜるんだぜ。」と、年雄としおさんが、いいました。
雪消え近く (新字新仮名) / 小川未明(著)
と、突然頭の上で、ごろごろと春のらいが鳴った。仰向あおむいて見ると、空はいつの間にか灰汁桶あくおけきまぜたような色になって、そこから湿っぽい南風みなみかぜが、幅の広い砂利道じゃりみちへ生暖く吹き下して来た。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
温気うんきを混ぜた南風みなみかぜ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「もうってもたいしたことはない。みなみあかるいから南風みなみかぜそうだ。そうすれば、どんどんえてしまうからな。」と、おじさんは、いいました。三にんは、かお見合みあって、にっこりわらいました。
雪消え近く (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかし娘じみた細君の代りに図々づうづうしい母を見出したのは、……保吉は歩みつづけたまま、茫然と家々の空を見上げた。空には南風みなみかぜの渡る中にまるい春の月が一つ、白じろとかすかにかかつてゐる。……
あばばばば (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
のぞいて遊ぶ南風みなみかぜ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
快い南風みなみかぜ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)