前晩ぜんばん)” の例文
一大事と云ふことばが堀の耳を打つたのは此時このときはじめであつた。それからはどんな事が起つて来るかと、前晩ぜんばんほとんど寝ずに心配してゐる。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
すると又、その翌日の同じ時刻に、右の眼が前晩ぜんばんよりも一層はげしく、ずきんずきんといたみ出しました。
按摩 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
その二人は前晩ぜんばん泊った温泉町から電報を打って停車場ていしゃじょうもよりの家へ某事を頼んであるので、その家へ往ってを明かし、己の家へは翌朝の汽車で帰ったような顔をして帰ると云うことになっていた。
青い紐 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
しかしそれは前晩ぜんばんに酒を飲んだ為めであったと見えてうがいをして顔を洗ってしまうと、さっぱりした。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
前晩ぜんばん酉の刻から、九郎右衛門とりよとを載せるために、酒井家でさし立てた二ちょうの乗物は、辻番所に来て控えていたのである。九郎右衛門、文吉は本多某に、りよは神戸にあずけられた。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
前晩ぜんばんに空が晴れ渡って、星がきらめいて、暁に霜の置いた或る日の事であった。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)