刎出はねだ)” の例文
およぎは出来たが、川水の落口で、激浪にまれて、まさにおぼれようとした時、おおきな魚に抱かれたと思って、浅瀬へ刎出はねだされて助かった。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
やがてみずから麺粉めんふん鶏卵けいらんを合せき居られしが、高橋も来りてこれを見て居けるうち、鶏卵の加減かげん少しぎたるゆえ、ぱちぱちと刎出はねだし、先生の衣服いふく勿論もちろん余滴よてき、高橋にも及びしかば
そこで、かがんで、毛虫を踏潰ふみつぶしたような爪さきへ近く、切れて落ちた、むすびめの節立った荒縄を手繰棄てに背後うしろ刎出はねだしながら、きょろきょろと樹の空を見廻した。
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
両方でを寄せるうちに、松の根を草がくれの、並木下の小流こながれから刎出はねだしたものではない。昼間、竜巻の時、魚が降った、あの中の一ぴきで、河北潟から巻落されたに違いない。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
百人一首ひやくにんいつしゆのおぢやうさんの、「いくののみち」もそれか、と辿たどつて、はる/″\と城崎きのさきで、佐渡さどおきふねんで、キラリと飛魚とびうを刎出はねだしたから、きたなくもおびやかされたのである。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)