内儀かみさん)” の例文
宿の内儀かみさんは既う四十位の、亡夫は道廳で可也かなりな役を勤めた人といふだけに、品のある、氣の確乎しつかりした、言葉に西國の訛りのある人であつた。
札幌 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
又「隠してもいけません、そちらの惠梅様というお比丘尼さんは前町の藤屋という荒物屋の七兵衞さんのお内儀かみさんで、お梅さんと云いましょうな」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
宿の内儀かみさんはやはりそれしゃの果だ。仕方がないから、内儀に事情を話して、お前さんが探出したら礼をすると言ったところが、内儀は内儀だけに、考えた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
六の内儀かみさんが、おなじく赤いぶつぶつの乳房をはだけて、怪しげな赤ん坊の頭を片手で吊り気味に強く押しつけて、それでお盆に沢庵と一緒に載っけて出て来た。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
板倉屋の主人万兵衛は年甲斐もなく女癖おんなぐせが悪く、三年前に内儀かみさんが死んでからは、後添えも貰わずに乱行つづきですが、金がうんとあって太っ腹で、人にうらまれるような人間じゃありません。
徳利とくりと味噌漉を置いて行くは、此家ここ内儀かみさんにいいつけられたるなるべし。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
宿の内儀かみさんう四十位の、亡夫は道庁で可也かなりな役を勤めた人といふだけに、品のある、気の確乎しつかりした、言葉に西国の訛りのある人であつた。
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
内儀かみさんがそれは飛んだ事でございます、御心配なしにお泊んなさいと云うので、其の晩は泊って、翌朝よくあさ小船で帰りましたが、本郷の宅では大騒ぎで
往きの旅に東京の番町の友人等と連立って船まで別れを惜みに来てくれたその旅館の内儀かみさんだ。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「へッ、へッ、お安くねえ内儀かみさんだ」
その男が内儀かみさんの片腕になつて家事万端立働いてゐて、娘の真佐子はチヨイ/\手伝ふ位に過ぎなかつた。
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
柳橋にはお村さんよりほかい芸者しゅは無いとうちのお内儀かみさんも云って居りました、お村さんいけませんねえ
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
日頃顔を見知った八百屋やおや夫婦も、本町から市町の方へ曲ろうとする角のあたりに陣取って青い顔の亭主と肥った内儀かみさんとが互に片肌抜かたはだぬぎで、稲荷鮨いなりずしけたり、海苔巻のりまきを作ったりした。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
まア貴方あんたには初めてお目にかゝりましたが、茂之助さんは前橋の六斎の市のたんびにお出でなすったが、お前さんという立派なお内儀かみさんや子供のある事は存じません
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
若布わかめう御座んすかねえ」と門口に立って声を掛ける女が幾人いくたりもあった。遠く越後の方から来る若い内儀かみさんや娘達の群だ。その健気けなげな旅姿を眺めた時は、お雪も旅らしい思に打たれた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あんたの内儀かみさんのおえいどんまでが一緒になって貴方あんたを突出すべえとするは、情ねえこんだから、わしい云うだけの事は云いやんす、貴方あんたが出れば原丹治親子が乗込むにちげえねえが
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
店頭みせさきの玻璃戸に燈火あかりの映る頃、こう言って訪ねて来たのは三吉であった。丁度お種や豊世は買物を兼ねてぶらぶら町の方へ歩きに行った留守の時で、二階を貸している内儀かみさんが出て挨拶あいさつした。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
伊之助さんから何とも音信おとずれが無いので、花魁は煩ってるのだ、きみ酷いネ、許嫁のお内儀かみさんが来て居るばかりではなく、御飯おまんまの喰ッ振から赤ん坊の出来たなどはあんまり手酷いじゃないか
わしイ宿を出る時に間違えでも出かすとなんねえから、名前なめえに掛るからってお内儀かみさんに言付かってわれ行って詰らねえ口い利いて間違え出かしてはなんねえと、気い付けられたんだが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
清水の旦那には一通ひととおりならねえ御恩を戴いた事がありましたが、あれだけの御身代のお娘子むすめごが、うして裏長家うらながやへ入っていらっしゃいます、その眼の悪いのはお内儀かみさんでございやすか
貴方あなた待ってくんなせえ、困った人だ皿をほうっちゃア困りますよ、よええ者いじめして貴方あんた困るじゃアねえか、大概ていげえにしてくんなせえ、此家こゝ連藏れんぞうさんは居ねえが、内儀かみさんは料理して居る
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
もし旦那……内儀かみさんでしょうが、結髪すきあげに手織木綿の単衣ひとえものに、前掛細帯でげすが、一寸ちょっと品のい女で……貴方あなた彼処あすこに糸をくって、こんな事をして居るのは女房の妹でしょう、好くて居る
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
店の端先はなさきへ出て旦那もお内儀かみさんも見ている処へ抜身ぬきみげた泥だらけの侍が駈込んだから、わッと驚いて奥へ逃込もうとする途端に、ふかしたての饅頭まんじゅう蒸籠せいろう転覆ひっくりかえす、煎餅せんべいの壺が落ちる
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お前も厭々ながらお内儀かみさんまであゝ云う訳になって苦労さした事も忘れやアしないから、私は何処どこ迄もお前に厭がられてもすがりつく了簡だが、しお前に厭がられ、見捨てられると困るが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
富「あら、そんな訳では有りませんが、お内儀かみさんがお有んなさいますかえ」
園「アラ、いやな、あんな事をいうのだもの、お内儀かみさん言告いッつけますよ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
やま「貴方にはお内儀かみさんがお有んなさるではございませんか」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)