僧衣ころも)” の例文
口の中にかう言つて、かれは僧衣ころもの上に袈裟けさをかけて、何年ともなく押入の中に空しくころがつてゐた鉄鉢てつばつを手にして、そして出かけた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
げにその中には害を恐れ牧者に近く身を置くものあり、されど少許すこしの布にてかれらの僧衣ころもを造るに足るほどその數少し 一三〇—一三二
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
最初に橋を渡って来た人影は黒い麻の僧衣ころもを着た坊主であった。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それでゐて、葬式が行くと、どんな貧乏なものでも、乃至ないしは富豪でも、同じやうな古い僧衣ころもを着て、袈裟けさをかけて、そして長い長い経をした。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
最初に橋を渡つて来た人影は黒いあさ僧衣ころもを着た坊主ばうずであつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
せいの高いほうが和尚さんの手を引っ張って、どこへかつれて行こうとする。洋服の原があとから押す。和尚さんはいつか僧衣ころもを着せられている。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
土塊つちくれのバタバタと棺に当たる音がする。時の間に墓は築かれて小僧の僧衣ころも姿が黒くその前に立ったと思うと、例の調子はずれの読経どきょうが始まった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
丈の低い小僧はそれでも僧衣ころもを着て、払子ほっすを持った。一行のたずさえて来た提灯はをつけられたまま、人々の並んだ後ろの障子のさんに引っかけられてある。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
かれは古い僧衣ころも袈裟けさをかけて、草履を穿いて、廊下から本堂の方へと行つた。もう蚊がわん/\とを立ててゐた。歩くとそれがバラ/\と顔に当つた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)