作男さくおとこ)” の例文
大きなかしの木にかこまれた土豪の住居である。お杉は、納屋なやの前へ駈けこむと、そこらに働いている分家の嫁や、作男さくおとこに向って
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まもなく、ひとりの作男さくおとこがでてきました。男はヤッローを見ると、つかつかとやってきて、いきなりヤッローをつかまえました。
長次郎は更に平左衛門の家の作男さくおとこをそっと呼び出して、主人の伜はこの十三夜の夜ふけに寝床をぬけ出して村境の川縁かわべりにさまよっていたのを
半七捕物帳:24 小女郎狐 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
山朸のさきにはかまをゆわえ、それにオコノコという長い荷繩をそえてかたげているのが、作男さくおとこ小百姓こびゃくしょうの常の出立いでたちであったともいわれている。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
椙原家の作男さくおとこで吾平というのが、使つかいを命ぜられて西の家へ行った。——西の家とは、敦夫の父の弟で、敦夫たちには叔父おじに当る源治の住居すまいである。
殺生谷の鬼火 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そこで両人の者はその作男さくおとこ兼馬丁兼厨夫ちゅうふがたくさんの兼職の中へ今一つ葬儀屋の職を加えて、やんごとない主人をひつぎの中に釘づけにしておいたという事実を発見した。
かつてヴィンケルハネスという一人の作男さくおとこが、ある時ユダヤ人を殺して遁走したが、やがて海賊に捕えられて奴隸となり、十七年間酷使されて苦しんだが、その後歸郷して
馬や牛、作男さくおとこや少年、あるいは改良された耕作器具からの援助をほとんどもたなかったから、わたしは人並みはずれて仕事がおそく、したがって並々ならずわたしの豆と親しくなった。
其後黒の姿はこっきり見えなくなった。通りかゝりの武太ぶたさんに問うたら、与右衛門さんの懸合で、黒の持主の源さんとこでは余儀なく作男さくおとこに黒を殺させ、作男が殺してて食うたと答えた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
友さんというのは、おばあさんのうちの作男さくおとこでした。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
それから、おかみさんはヤッローを、いちばんさいしょに中庭なかにわで見つけた作男さくおとこにわたしました。作男はヤッローをかかえて、トーケルンにいきました。
あさ飯を食って、身を固めて、三人が草鞋の緒を結んでいるところへ、母屋から作男さくおとこが何者をか案内してきた。
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
作男さくおとこ小舟こぶねって、ヤッローを舟底ふなぞこにおきました。それから、さおをさして湖の中にでていきました。
名主の家では承知して、作男さくおとこの友吉という若い男を貸してくれた。ここから竜濤寺までは少しはなれているので、その途中でも半七はいろいろのことを案内者にいた。
彼の父も次郎左衛門のいえ作男さくおとこであったが、彼が四つの秋に両親ともほとんど同時に死んでしまったので、みなし児の彼は主人の家に引き取られて二十歳はたちの今年まで養われて来た。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)