あずまや)” の例文
景子が英国ペンクラプの会員となって其の主宰者の彼から招待を受けて彼を此の家に訪問して以来、彼は打ち融けて時折り裏庭のあずまやでお茶の会をして呉れたりした。
ガルスワーシーの家 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
孔生は斎園さいえんあずまやに移った。その時孔生の胸に桃のような腫物はれものができて、それが一晩のうちに盆のようになり、痛みがはげしいので呻き苦しんだ。公子は朝も晩も看病にきた。
嬌娜 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
広い庭園は、今は黄いろくなった芝生しばふおおわれ、ところどころにあずまやみたいなものがあるかと思うと、それに並んでタンクのようなものがあったり、なにかいわくのありそうな庭園であった。
果して半畝位の庭があって、細かな草が毛氈もうせんを敷いたように生え、そこのこみちには楊柳やなぎの花が米粒をいたように散っていた。そこに草葺くさぶきの三本柱のあずまやがあって、花の木が枝を交えていた。
嬰寧 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
腰掛は入所患者のために、陽当りのいい場所に七つあるが、その竹藪の前にある腰掛はゆみのために設けたもので、屋根を掛けたあずまやづくりになっており、夜などは人の近づくこともなかった。
それは夏の燃えるような暑い時であった。その村にしゅうという家の庭園があって、へいくずれ家は破れて、ただ一つのあずまやのみが残っていたが、涼しいので村の人達がたくさんそこへ泊りにいった。
王成 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)