)” の例文
「父上、四つ目の真中にチョンのあるのばかり出て、ちっとも先へ進まれません。ノ目を外した賽はないものでしょうか」
うすゆき抄 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
その、無法な胆気たんきと、国光のみだれにおびやかされて、周馬は少し気を乱しながら、こう兵字構ひょうじがまえに直って、寄らば——とまなこをいからせた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あ、ではみだれになっているのだろう。それから、にえにおい、それは、あなたにはわかるまいが……銘があるとの話、その銘は何という名か覚えていますか」
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
云うな。ふうむ。小丸気味の地蔵帽子で、匂足においが深くって……打掛疵うちかけきずが二つ在るのは珍らしい。よほど人を斬った刀だな。先ず新藤五しんとうごの上作と行くかな……どうだい
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
刃の模様はの目か丁子か、逆心さかごころがあるかないか直刃に足があるかないか、打ちよけや映りなどの有無、においの工合い、全体の恰好なんかで、当らずといえども遠くないところ
寛永相合傘 (新字新仮名) / 林不忘(著)
白い光の紋流もんりゅうみだれに美しくえあがって、深みのある鉄色かねいろの烈しさと、無銘ではあるが刃際はぎわの匂いが、幾多の血にも飽くまいかと眺められる。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ははあ、みだれと来ていますね、悪い刀じゃありません、いや、どうして結構なものです、ちょっと、この類の程度はありません——誰ですか、相州の五郎入道正宗ですか」
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
刃紋はもん朧夜ろうやの雲に似るみだれ、ほしの青さを吸って散らすかとばかりかがやかしい、鵜首作うくびづくりの鋩子きっさきに特徴のある太刀のすがたは——まず相州系そうしゅうけい新藤しんとう国光くにみつとみてまちがいはない。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このほかに五の数だけはごと言わずにぐと申しやす、というやつで——こうして置いて、この賽ころを左の手にこう取って、右に壺をこう構える、手が足りねえから恰好かっこうがつかねえ、旦那
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)